【来訪】
【来訪】
「一番の長生きはわしですじゃ・・・」
一同が声のする方を振り向くと大理石の床にナサニエルが残った方の左手の爪で描いた六方陣の頂点にナサニエルとシャルロッテが対になって座りその中央に古いホログラムのようにゆらめきながら半身を出現させている長老の姿があった。
「長老がいらっしゃることはない、そこに転がっている黒ずくめをこちらに送ってくれ。」
とナサニエル。
「【龍人】でないものは【大いなる流れ】の中で消えてしまう。わしが行きましょう。」
「でも、長老が来てしまったら【聖なる館】の【聖なる泉】は消えてしまうんじゃなくて?」
「もう長い間【聖なる館】自体が【聖なる泉】の飛沫を浴びてすっかり安定しておる。少しくらいわしがいなくても大丈夫じゃろう」
「でも長老は貴重な…」
「そう、わしの【アティラ】は【金龍】。その檻は役には立たん。」
そう言って長老が立ち上がって【聖なる館】の方陣に飛び込んだ・・・
はずが、長老の代わりに一人の男の姿が大理石の上に現れた。
上等な紺のスーツ・白いワイシャツ・赤いネクタイを着込んだ恰幅のいい中年、特徴的な金髪の髪型と青い目の赤ら顔のザ・白人。
【カーズ大統領】がそこにいた。
その時、【聖なる館】では長老が首を折られ倒れていた。
そして、その脇にはアーロックも首から血を流して力なく横たわっていた。
「これはこれは【D・C】の皆さん、よくぞお集まりで。やあ、ヘレンよくやってくれたね。これは名誉勲章ものだよ。」
「大統領!?なんであなたが!!!」
驚くヘレンに薄笑いを浮かべるとカーズの背後から黒い影が浸み出て3m程の黒い双頭の鷲に姿を変えた。
「紹介しよう【オーハンゼー】だ。」
「っ!?!?!?」
ヘレンが声にならぬ驚きの声をあげる。
「何もそんなに驚くことはないだろう。国の代表が【龍】の一匹や二匹飼っているのは当たり前だろう。まぁ身の内に飼ってるのはそう多くはないが」
「なんで、あなたが!?大統領で【龍人】なんて聞いたことないわ!」
「そんな話は私も聞いた事はないな。我が一族の長男には受け継がれてきた秘密の使命と名前がある。【龍人】の力を手に入れる事。ついに6代目の私が成し遂げたのだ。」
「【龍人】の力を手に入れたのならば、もう【アロ】は必要ないでしょう、この子はもう普通の人間の子供に戻ったのよ。解放して。」
「おいおい、その『珍獣』は私のひいひいひいひいおじいさんが捕まえたんだ。勝手に持ち出されては困る。」
「あなた、まさか!?」
「私の名前は?」
「マック・K・カーズ…K、K、K、カーク!!!」
「そう。この大陸から野蛮人どもを駆逐した英雄『カーク大佐』の遺志を継ぐのがこの私だ。」
「大統領さん。あなたの祖先が自由を奪ったこの子を外の世界に戻してあげるのが子孫であるあなたの役目じゃないの。」
ハマが子供の事となると力が入る。
「そうよ。」
「もう人間にしちゃったもんね。」
若い二人が後に続いた。
「では、代わりにみなさんに残っていただくとしよう。」
「そんな事、許されないわ。この人たちはアメリカ国民でも無いのよ。国際問題になるわ。」
「残念ながら、この【龍の檻】の中で起こった事は決して表に出る事はない。たとえ国防長官が【龍人】に襲われて不慮の死を迎える事になったとしてもな。」
一同が驚愕の眼差しで突然の来訪者を見つめている中、ナサニエルが悠然と立ち上がると低くて柔らかな声で残っている左手を紳士的に動かした。
「お嬢さん方、【龍戦】をせねばならぬようだ。中央の結界の中へ」
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