【奪還】

【奪還】


純白のVTOL機には長老を除く5人のDCとヘレン国防長官の合計6人が乗り込んだ。

「じいや、ペンタゴンまでお願い」

「はい。お嬢様」

操縦席にいる白髪がちな男の姿を見るとナサニエルはウイングスーツのジッパーを上げ、ヘルメットを被ると

「間男と一緒とは」

吐き捨てるように言い捨てて出ていった。

あっけにとられている一同にポーラが一言

「わーい女子会だー!しゅっぱーつ!」

これを合図と垂直に垂直に飛び立つ機体のリアゲート脇のフックには銀色の宇宙人が純白のユニコーンの紋章と睨み合う形になって、しっかりと掴まっていた。

一方、機内ではシャルロッテに質問が集中していた。

「じいやさんはいくつなの?」

「ああ見えて54歳なの。今の私の夫。」

「ええっ!波平さんと一緒じゃん!」

「彼は出会ったときからじいやで」

「お嬢様は出会ったときからお嬢様でございました。」

容赦無く矢継ぎ早に出される現代っ子達の質問、シャルロッテはほぼすべてに楽しそうに答えた。

「シャルちゃん、すっごく若く見えるしお肌もキレイだけど、パックとかなんか美容系はやってるの?」

「ふふふ、ありがと。こう見えて、結構な歳なのよ本当は。じゃあ少し説明するわね、長老からもう聞いたかもしれないけれど。あのね、【合龍】だけだと少し寿命が延びる程度。偉人とか、東洋で仙人なんて呼ばれるものにこれが多いのね、元気に年取っていく感じ。けれど【合一】して【龍人】になるとその時点で肉体的の老化は止まるの。私は肉体的には17歳のまま。」

「え〜!?じゃあ、波平さん、犯罪じゃん!」

「ふふふ、戸籍上はただの他人だし、世間的には執事という事になってるから問題ないわ。」

「シャルロッテさん、もし子供ができたらどうなるの?」

「そうね、普通の人間と結婚し子供を作ることはできるけど【龍】の力は一切受け継がれないと思って。ただし【龍人】同志の場合は別。私も、伴侶・子供を何人も見送ることに疲れたころ、同じ様に【龍人】の相手を探していたナサニエルと出会ったの。」

「でも、【白龍】と【黒龍】だと、手を繋いだりキスしたら離れられなくなるんでしょ?そのぅ…」

「そうよー!大変だったんだから。まぁ細かいことは抜きにして、【聖なる館】で長老の見守る中、結ばれて【子】ができました。でも、出産の時のハプニングで大きな流れにさらわれてしまった。その後【アロ】として発現したけれど、すでに捕らえられて行方不明になっていた。」

「ずっと探してたんだね。」

「そう、ずっと。最近になって【アロ】が囚われている場所が特定でき、ヘレンがコンタクトを取ることができて、長老のいる【聖なる館】に【アメリゴ】を呼び出すことが出来たの。」

「その時、初めて会ったのね。」

「【アロ】が監禁されているそこは、流れを循環させて【龍】を束縛する五角形の結界をそのまま巨大な施設にしたもの、すなわち『ペンタゴン』だったの。そこの地下深くに閉じ込められて、様々な実験をさせられた。それは今も続いているの。【アロ】が【龍人】でなくなったことは普通の人間にはわからない。早く救い出さないと人体実験されてしまい、最悪の場合、命の危険があるの。あと少しだけ力を貸してくれる?」

「オッケー! わかった!」

「はい。もちろんです。」

やる気満々で浮かれているようにも見える若者達にハマが忠告した。

「老婆心ながら言わせてもらいますよ。遊びじゃ無いんですからね。ここは銃国家アメリカ。【龍人】だって鉛玉が当たれば痛いのよ。」

真面目顔なハマの方を向き直って、ポーラも真面目な顔で一言こう言った。

「 【老婆神】!?ハマちゃんて神様だったんだ!」

「『ろうばしん』ってそういうことじゃ無いと思うよ。」

マリーのツッコミで一同が大笑いしたところでヘレン国務長官も口を開いた。

「現大統領のカーズは核に変わる兵器としての【龍人】の利用を促進させようとしているの。けれども【アロ】は白人に協力など決してしない。その為に新しく【龍人】を集めようとしていて、ハマ達を捕らえようとした。あの【DCゴーグル】を使ってね。私は反対。だから世界各国で同様に捕らえられ、利用されている【龍人】を開放して真の平和を求める組織【ディクロン】に入った。」


続けてヘレンは国家機密の中でも最重要事項である『ペンタゴン』の情報を元に作戦を説明した。

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