【ポーラ】
【ポーラ】
先週引っ越したばかりのこの部屋は、都心にも関わらず、窓の外には公園の木々が広がり清々しい風が部屋の中まで新緑の香りに洗われていくようだ。
人気商売ということもあり、定期的に引っ越すことが多い。これまではなかなか決まらないことがあったが、今度の部屋に内見で入った途端に決まった。
「いー感じ!ここに決めた!なんかいい気がくるくるっと回ってる!」
1日だけお休みをもらって、お気に入りの家具とたくさんの洋服をきれいに片付けた。
それから1週間。今日は誕生日にも関わらず朝から大忙しで日付の変わるギリギリになってやっと、山のような荷物を抱えたマネージャに連れられて本日最後の雑誌の撮影の仕事を終えて帰ってくると、事務所のスタッフと家族の手でリビングが飾り付けてあった。
『HAPPY BIRTHDAY 25!!!』自宅に届いた誕生日プレゼントの山を大きな瞳を更に見開いて人気ハーフタレントのポーラは幼い子供のように叫んだ。
「すごーいっ!!!ありがとうっ!!!」
「知らないひとからのプレゼントは先に開けさせてもらいました。安全が確認された食べ物は冷蔵庫の中です。衛生上問題があるものはじ...」
「事務所の方で処分でしょ」
マネージャーが言い終わるより先にさえぎったので続けて
「はい、メッセージカードはまとめてあります。どうぞ 」
「ありがとう!」
「もし要らないものがありましたら、そちらの段ボールに入れてください、事務所の方で...」
「ショブンショブンね!うんわかった、とりあえずおいとく。」
「では明朝六時にお迎えに来ます。」
「うんわかった!♪ピロリン♪『おつかれさま~!』ウフフッ♥」
「ポーラ、この距離でLINEはやめてください。 LINE…」
「OK!おやすみー!」
通常ではありえないほどのマシンガンの打ち合いのようないつもの超高速なやり取りのあと、表情ひとつ変えずにマネージャーは部屋を出ていく。この位の事でいちいちかまっていられるほどこのタレントのマネージメントは簡単ではないのだ。
お気に入りの花柄のジャガードのソファーにパジャマでころりと落ち着いたところで、メッセージカードのすべてに
「ワーありがとう!」
「やだー!!」
「ほんとに嬉しいー!」
と一つ一つお返事をしていく。ふとぬいぐるみの山に大きな榛色の目が釘付けになった。
「あれ?ライオンちゃん動いてるの?」
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