第15話 カナちゃんと自動ドア

 親友のカナはちょっと変わってる。

 でも、どこがって聞かれると少し困る。それってとても説明しにくくて。

 たとえばある日の放課後、カナと一緒にコンビニに寄り道したときのこと。


「サクラちゃんは、自動ドアってどうして開くか知ってる?」

「どうしてって、センサーでドアの前に立った人を感知してるんでしょ」

「多くの人にとってはそう」

「全員そうだと思うけどな」


 私がそういうと、カナはへにゃりと眉尻を下げた。


ホールというものがあります。見えないけれどこの世界のあっちこっちにホールがあるんです」

「穴? 道にあいた穴とかのこと?」

「道に穴があくように、空間にも穴があくんですよ。それがホール」

「ほう」


 カナの言うことはだいたい訳が分かんない。けどまあ続きの説明を聞いてみよう。


「そこの自動ドアの前にもたぶんホールはあるでしょう」

「なんだか怖いね」

「そうなの! そして世の中にはホールに嵌りやすい人がいるの」

「大変だ!」

「そして私はよくホールに嵌ります」

「確かにカナはよく窪みに足を引っかけて転ぶね」

「ぎゃふん」


 平成か!

 いや、昭和か……。


「それで、そのホールがどうしたの?」

「ホールに嵌った人は、センサーが見つけてくれなくなるんです。ちゃんと扉の前に立っているのに、自動ドアのセンサーがなかなか反応してくれないんです」

「それはちょっと困るねえ」

「どうしたらホールから出られるか、私にはわかんないのよう、サクラちゃん。お願いだから自動ドア開けて……」


 さっきからコンビニの前で踊ってると思ったら、自動ドアを開けたかったのか。

 ホールが有るか無いかはわからない。でも私がカナの隣に立ったら、すぐに自動ドアは開いた。


「やっと入れるぅ」

「良かったね、カナ」

「サクラちゃん、帰る時も一緒にいてね」

「はいはい」


 カナは嬉しそうにコンビニに入った。

 やっぱり、カナってちょっと変わってる。

 でもどう変わってるのかって聞かれたら、説明がすごく難しい。


【了】

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