第4話 暗黒竜逃げて! タケオがワニ肉高たんぱく低カロリー脂質低めって唱えてる

U月ts日


 やはり問題が起こりました。

 鳥肉の枯渇です。

 多くの人がササミを求める偏食をすれば枯渇するのは当然です。

 いつも大胸筋をピクピクさせながら白い歯で笑っているタケオも真剣な顔でホエイを製造しています。ホエイの枯渇もすぐでしょう。

 偏食をやめればいいだけなんですけどね。

 


U月t呂日


 今度は大事件が起きました!

 かの災厄と呼ばれる暗黒竜が率いるワイバーンの軍勢による強襲です。

 私は急いで王都全体に結界を張りましたがいつまで持ちこたえられるかわかりません。さすがに暗黒竜のブレス相手では分が悪い。私だけならばともかく王都全体を守り切れない。

 そう思い悩んでいると気づけばタケオが横に立っていました。食事量を減らし、気を落としていたタケオです。思わず結界を解きそうになりました。純然たる恐怖により気を失いそうになったからです。これがタケオの本気。だとしたら私が今まで警戒していたことは正解でした。これは人間ではない。王都を襲っていう暗黒竜よりも遥かに危険な何かです。

 タケオの横顔に浮かんでいたのは初めて見る獣性を露わにした獰猛な笑み。捕食者の顔でした。

 

「ワニ肉。高たんぱく、低カロリー、脂質少な目」


 謎の呪文がタケオの口から漏れ聞こえてきます。理性のタガを外し、自らをバーサーカーとする魔法でしょう。

 私が意識をタケオに向けてしまったことを隙と見たのか暗黒竜がブレスを放とうとしていました。王城ではなく城下町に。いけない。完全には防げない。そう焦る私の顔に風が吹きつけられます。タケオが王城か疾走していました。一歩が大きく地面を割りながら跳びあがるように駆ける人型の筋肉。新種の魔物です。違いましたタケオです。

 王都の民初めてお目見えされる勇者の姿に悲鳴が上がります。

 よかったです。私の感覚は間違ってない。一部のメイドと騎士と王と王子と宰相どもがおかしいのですよね。ついに放たれる暗黒竜のブレス。よりも脅威としての存在感が強いタケオ。

 王都の門の上に跳び乗ったタケオは私を振り向きました。白い歯でニコッとしてます。私はあの筋肉を打ち破れる攻撃魔法の開発を決意するとともに、結界を狭めて門の部分だけ結界を解きます。

 タケオは身体を横に、腕を組んでのサイドチェストというポージングで暗黒竜のブレスを向かい討ちます。勝負はわかりきっていました。暗黒竜のブレスはサイドチェストにより乱反射されて、ワイバーンの軍勢を撃ち落としていきます。理屈はわかりません。暗黒竜は驚き、ブレスを止めます。理解できない光景に暗黒竜も唖然としているのかもしれません。暗黒竜に全面的に同意します。でも動きを止めてはダメ。暗黒竜早く逃げて。

 私の思いは届かず、タケオのポージングが変わります。

 モストマスキュラー。身体を前かがみ出し、僧帽筋、三角筋、上腕二頭筋、極限まで巨大化された筋肉を前面に押し出し、タケオが吠えます。

 タケオはその姿に反して暴力は好みません。だから攻撃するところを初めて見ました。

 王都が輝きに包まれました。タケオの口から飛び出した光線は暗黒竜の首を切り飛ばし、遠くの巨人住まう山脈を崩し、北部に広がる魔の森に道を作りました。

 ワイバーンたちも壊滅です。

 恐ろしい。だからタケオは今まで攻撃しなかったのですね。

 その日人類は悟りました。異世界召喚はしてはいけません。異世界は恐ろしいところです。

 ただ食糧問題はドラゴン肉で解決したのはよかったと思います。

 

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