5日目 五人組
「今年もついに例の行事が近づいてきた」
押し黙っていた横山がゆっくりと目を開き静かにそう告げた。放課後の二年二組の教室の一角でその会議は行われていた。横山は両肘を机につき、顔の前で両手を組み合わせたポーズでいかにも深刻そうだ。
「今年も去年同様に六人組の固い結束を見せる時だ」
「ああ、そうだな」
「俺たち同志は今年も彼女を作らず六人仲良くクリスマスイブを過ごすのだ!!」
「おおおぉおお!!」
「鍋パ! タコパ! カラオケオール! なんでも来い!」
大山、三井、下川、そしてこの僕、村瀬も共鳴する。しかし、ただひとり川田だけは歯切れが悪かった。それに対する周りの反応は敏感だった。
「……川田?」
「お前まさか……」
「いや、ちょ、タンマタンマ。つい先週のことでさ。話そうと思ったんだよ。三組の島田さんにさ――」
「そんな話聞きたくねぇ!!」
「抜け駆けしやがったなてめえ!!」
「お前なんか仲間じゃねえ!!」
「さっさと出ていけぇ!!」
造反者の川田を皆がやんややんやと罵倒し教室の外に追いやってしまった。
「これで裏切り者はいなくなったな」
「全く、女に
「しかし、これで五人組の結束はさらに強固なものになったぞ」
皆がそれぞれ意気投合するなか、僕だけは別のことを考えていた。
一緒になって行動し川田を追い出してはいたが、実のところ、僕も人のことを言えなかった。あの夜、アパートで初めて出会った白銀の髪の少女のことを忘れられずにいたからだ。
「なあ、今年は天体観測とかどう?」
「いいねえ~」
「この時期は何が見えるんだっけ?」
みんなとの会話でそれを悟られないように、努めてあの少女のことは思い出さないようにした。さながら、過ぎ去りし思い出を懐かしんだ後、惜しみながらアルバムを閉じるように。
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