第40話 次の一手④
さっきから話は暗礁に乗り上げてばかりのような気がする――しかし、一つずつ確実に進めていくためにはこれもまた必要な課程なのだ。そう推測して進めていくしかない。モチベーションの問題にも繋がる訳だし。
「……何かアイディアはないか?」
「…………合法的な手段を用いるのならば、不可能だろうね」
そう但し書きをするということは、非合法ならば可能だ――ということか。
非合法というジャンルは幅広い。グレーゾーンぐらいの非合法ならまだしも完全アウトなブラックのやり方だとすれば、確実に警察のお世話になることは間違いない。
「……別に気にしなくて良いんじゃないか? きみはもう既に警察のお世話になる可能性を十分に秘めている。それを今更気にすることでもあるまい」
あ、そうか。
既に殺人鬼と行動を共にしていて、警察に居場所を連絡していない時点で――ぼくはもう、警察のお世話になることは間違いなかった。
冷静に考えることがあまり出来ていなくて、この辺りは盲目的でもあった。
「じゃあ、どうする? 非合法的な手段だったとしても何か良いアイディアがあるというのなら、それは従っておくべきだと思うがね」
正直、今はそれしかアイディアがない。
であるならば、情報屋に従うしか道はないか――。
「で、どんなアイディアだと言うんだね?」
「学生課のサーバーにハッキングを仕掛ける。それだけのことだよ」
「いや、ハッキングって……。そんな簡単に言ってのけるけれど、可能なのか? だって、一応学校のサーバーだぞ」
「そこは心配ご無用。フィッシングメールって知っているだろう? あれを使えば良いんだよ。実は既に餌は投じていてね……」
アウトじゃねえか。
見つかったら、全員刑務所行きじゃないのか……?
「そこは問題ない。というか、そういうリスクを極力排除してから行動するに決まっているだろう? 幾ら何でも、そんなリスクを気にせずにハッキングをするほど馬鹿ではないからね。相手だってそれ相応のセキュリティを堅持している可能性だって十二分に有り得る。……ま、それが全部兼ね備えているところはそれほど多くなく、仮にセキュリティが問題なくてもそれを運用する人間が駄目だったら意味はないのだがね」
言いたいことは分かる。
けれどもリスクが伴うのならば――。
「リスクのことばかり気にしていては何も始まらないぜ? 何、心配しなさんな。一応こちらが全部灰を被るつもりで動いている。無論、それなりにお金は貰うがね」
危険な仕事は全て行う。
その代わりに金を払え――と。
いやはや、シビアなやり方だな。しかし、至極的を射ているやり方であるのもまた事実。危険なことは全てやる。そちらがリスクを気にすることはしなくて良い。ただし、それなりの費用は請求する――もっともなやり方であることは間違いない。
しかし、それが支払えない人間だとどうすれば良いのだろうか。
ぼくなんかは一介の大学生だ。法外な値段を請求されたところで消費者センターに駆け込むことは出来ないだろうし。
「そこについては安心したまえ。レディ・ジャックが支払ってくれるよ。彼女はとても金払いは良いからね、いつまでも搾取……おっと、良いお客さんであって欲しいものだけれど」
今言って良い言葉のラインを悠々と超えていかなかったか?
ま、レディ・ジャックは気にしていなさそうだし別に良いけれど。
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