第38話 次の一手②
「ならば一つ提案をしよう。……大学では、どういう捜索をする予定かな?」
情報屋はそんなことを言い出したので、ぼくは少しだけ驚いた。情報を売り払うだけ売り払って後は終わり――とばかり思っていたからだ。
「情報屋、そんなことを言うからには何かアイディアがあるのかな? そのアイディアも費用を請求するのか?」
「レディ・ジャック、睨まないでくれよ。きみが睨むと恐ろしくて致し方ない。……ただ、これについては言っておこうか、このアイディアはさっきの情報料と併せて請求で構わないよ。言うならばぼくからのサービスだ。面白いとは思わないか? どうせタダなら聞いてみたらどうだい?」
「タダなら聞いてみたらどうなんだ?」
これにはぼくも同意した。
タダというのはかなりリスキーなワードであることは間違いない。仮に嘘を吐かれていたとしてもそれに気付けなければ意味がないからだ。
だったら聞かない方が良いのか――そう思うかもしれないけれど、それは一長一短だな。間違っているかもしれないしそうではないかもしれない。
メリットとデメリットについて延々と語っていったとしても、そこに結論を導き出すのは不可能に近い。何故なら時間をかければかける程、泥沼にハマっていくからだ。
こういうことは時間をかけずにさっさと決めてしまった方が楽だ。
じゃあ冒険するのかしないのか? そういう話になるのならば、答えは火を見るよりも明らかだ――ぼくはそう思う。
「……御託を並べたところで、結果は何一つ変わりゃしねーんだよ。それぐらい分かってんのか?」
分かっているとも。
分かっているからこそ――さらに話を進めておきたいところではあるのだよな。
というか、ここで取捨選択出来る程、今のぼく達に余裕があるか? と言われれば――答えは否だ。
「ったく、こんなしちめんどくせー人間に関わるんじゃなかったぜ。情報屋、ほんとーにそのアイディアは素晴らしいアイディアなんだろーな? こっちが喉から手が出るぐらいには欲しいアイディアで問題ねーんだろーな?」
「そこについては問題ないよ。胸を張って言える……そんなものはないけれどね」
さて。
前置きが長くなったが、ここからが本題だ。
「大学関係者という大きいパイで考えるから間違っているんだ。……もっと小さなパイにならないか、そう考えたことはないかい? 大きいパイを切り分けられれば処理出来る確率が格段に上がる――そうは考えられないかな?」
「そりゃ、確かにその通りだけれど……。でも、どうやって? 現状話を聞いた限りだと大学関係者だということしか分からないんだぞ?」
「大学近辺に彷徨いているというだけならば、そうとしか言い切れないだろうね。尤も、それが真実ではない可能性も有り得る。大学近辺で起きているから大学関係者をフィルターにするということ自体が、間違っているのかもしれない」
何なんだよ、さっきから。
途轍もなくふわふわ浮いている発言ばかりしている気がするぞ、この情報屋は。
本当にこの状況を打破する一手を持っているのかね?
「まあまあ、慌てなさんなって。こっちだって何もアイディアがない訳じゃない。アイディアというよりかはもう一つのインフォメーション、つまり情報ってことなんだけれどさ」
ニヤリと笑みを浮かべた情報屋は、テーブルの脇から何かを取り出した。
それはノートパソコンだった。リンゴのマークが付けられているスタイリッシュなノートパソコンだったと思うけれど、やっぱりこの時代だからスマートフォンとノートパソコンで仕事をしている、ってことなんだろうな。足で稼ぐ時代ってもんは、とっくのとうに終わっているのかもしれない。
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