第36話 情報屋は性別不明④
法則性――情報屋はそう言ってはいたけれど、実際のところどういった法則があるのだろうか?
「……法則性。そこまで言うならアンタはそれを見つけているんだよな?」
「ま、一応ね。……簡単に言えば本物に僅かなノイズが乗っているんだ。そのノイズが、つまるところ偽物の犯行と言う訳だ」
ノイズ、か。
簡単とは言っているけれど、きっとその法則は見つけるのが難しい、微妙なものなんだろうな……。だからこそ警察も見つけられなかったし、レディ・ジャックが濡れ衣を着せられる結果にもなる訳だ。
「……さっきから御託を並べているようだけれどな、本当に情報を持っているんだろうな? 実は何も持っていなくて、時間稼ぎをしたいか或いは良い落とし所を探している訳ではあるまい?」
「まさか。ぼくを誰だと思っているんだい? 自分で自分のことを上げるのは少し恥ずかしいけれど……、売る情報には責任と自信を持って扱っているんだぜ? そんなぼくが、情報を持ち合わせていないのに時間稼ぎをするとでも思っているのかい。だとしたら心外だな」
情報屋には情報屋なりのプライドがある――そう感じられた。しかしそれは至極当たり前のようにも思える。
何故なら、情報屋だって仕事をしている以上は仕事に一定のプライドを持っているはずだからだ。仕事にプライドを持っていない人間は居ないはずだ――多分、きっと、メイビー。
「確かに、それは少しお門違いだったかもしれないな……。済まないな、情報屋。長々と話をしていたからまさか解決せずに終わるのでは、と思っちまってな。……ダメだよなー、人を信じねーってのは。けれども、あたしの辞書には信頼って単語は存在しねーからな、そこについては諦めてもらおーじゃないか」
諦めろ、って。
凄い自己中な考えだけれどさ、でもそれぐらい受け入れないとついていけないのかもしれないな……。もしかして、こっちの世界の人間は皆自己中だったりするのか?
「いや、そんなことはないね――確かに自分のことしか考えていない連中はあまりにも多いよ。けれどね、そんな考えを抱いているからって、ここまでじゃないよ。やっぱり自分の意見と他人の意見をぶつけ合って、それが違うと分かったら素直に軌道修正するぐらいの余裕はあるもんだよ。……レディ・ジャックみたいなのはなかなか出てこないね」
「人をレアメタルみたいに言うんじゃねーっつーの。……で、ノイズってのは何処に出てきてんだ? あたしがやった現場以外って言うけれどよ、そんなに多くの現場が該当すんのか?」
「今、それについて話そうとしていたのだけれどね……。うん、そこについては肯定することとしよう。ノイズが認められる現場は全部で四つだ。そして、その四つには共通点がある。……何だと思う?」
「……何だろうね。ある場所が近いとか?」
ぼくは思いつくことをそのまま口に出してみた。
それを聞いた情報屋は目を丸くする。
「流石というところか何というか……。レディ・ジャック、きみが連れてきたこの一般人は予知能力でもあるのかい?」
「予知能力があるのなら、あたしに会うとは到底思えねーけれどな。あたしに気に入られなかったら即辻斬りなんだぜ?」
辻斬りってそういう意味合いで使って良い単語だったっけ?
「……じゃあ、答えを言おうか。ノイズが認められたのはこの四つ」
スマートフォンをタップすると、四つの点が青色に変色した。その点は偏っている。てっきり、四方八方に散らばっているものとばかり思っていた。
そして、その点の近くにあるのは――。
「……これは」
「美澄地区。それもここにある大学近傍で起きている四件が、どれもレディ・ジャックの法則性から外れたものとなっている。ここから推察されるに……レディ・ジャックの偽物はこの大学の関係者である。そうは考えられないかな?」
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