第31話 情報屋を探しに②
南山駅から西に進むと、商店街が広がっている。そりゃ昔からこの街に若者が集まっていた訳ではないのだし、商店街ぐらいあるのは当然だと言えるのだけれど、いざ本物を目の当たりにするとこの街も古き良き町並みが残されているのを改めて実感する。
「……流石にこの町並みをどうこう言う筋合いはないのだけれどね、しかし現実にここを見ていると、若者には向いていないことは分かるよな……。だって今っぽくないし。ポップじゃないしなー」
ポップな町並みって、何がイメージされるんだ?
例えば、壁をピンクにすれば良いのか? それじゃあまるで楳図かずお邸だよ。
「楳図かずお邸は赤と白の縞模様だろ、間違えちゃならねーよ」
そこについてツッコミが入るとは思わなかった……、ま、間違えたぼくに非があるのは確かなのだけれど。
「ところで、情報屋は何処に?」
本題を忘れてはならない。
レディ・ジャックの偽物――それを見つけるための唯一のアイディア、情報屋。それを見つけなければ、結局ぼく達は何も決定することが出来ない。だったら、それをどうにかしてクリアしなければならない訳だし、どんな方法を用いてでもそこに辿り着かねばならないのだ。
「……強引だねー。確かにそれは否定しねーけれどよ、別に情報屋が居なかったからといって全てお終いって訳でもねーよ。別のアイディアを考えれば良いだけの話だ……、ま、そのアイディアがどういうアイディアになるかは分かんねーし、アイディアが二度と生まれないかもしれないことを鑑みるならば、そのアイディアに縋る気持ちも分からんでもねーがな」
「だからそのアイディアを頼りに今ここに来ているんだろうが。……とは言っても、いざ言ったところで情報を『買わないと』意味がないんだよな……」
だって相手はそれで生計を立てているのだ。
こっちだって幼馴染を殺されたという明確な理由が存在する。だから火急的速やかにその情報を入手したいところだ。仮に断るのならば実力行使に出たって構いやしない。
「実力行使とは言うが、どうやって出るつもりだ? 相手は裏の世界で長く暮らしているエキスパートだぜ? それに比べて、アンタはただの人間だろう? 表の世界でぬるま湯にずっと浸かってきた、お気楽な存在だ。そんな人間に、情報屋が脅されたところで従うと思うかね?」
「だからお前が居るんだよ――レディ・ジャック」
ぼくは一瞬の間も与えることなくそう答えた。
確かにレディ・ジャックの言う通り、ぼくはただの人間だ。表の世界――そもそもぼくはその世界しか知らなかったのだけれど――でずっと暮らしてきたのだ。だから相手からしてみれば油断する可能性は十二分に有り得る。
寧ろこちらを相手にしない可能性もあるのだ。
だったらこっちもそれに見合った先手を打っておく必要がある――そのためのレディ・ジャックだ。
彼女ならば裏の世界に精通しているし、情報屋との繋がりもある――どうせならば情報屋となやり取りも彼女にしてもらえば良い。ぼくはあくまで弁が立つただの一般人だ。そのスタンスは崩してはならないし、崩す必要もない。
「……ま、あたしを連れて来た理由も想像付くがね。ってか、あたしが居なけりゃ情報屋に辿り着くこともなく、あたしに意味のない恨みを言い続けていただろうな――あたしにとっちゃ、良い迷惑だけれどよ」
「良い迷惑……そりゃそうかもな。けれど、アンタが居なければそんなアイディアも出て来ることはなかった。そこについては感謝もしているよ、そこだけは安心してくれ」
「おっと。その発言については最後まで取っておいてくれよ。こっちだって偽物を探して消滅させるまでは、一応共同戦線を結んでいる訳だからな。今ここで感謝されちゃ、いつまでも感謝し続けなきゃなんねーぜ? だってアンタはただの一般人。裏の世界の知識もゼロ。つまり……戦力外なんだからよ」
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