第三章 手がかりを探しに
第30話 情報屋を探しに①
情報屋ということについて、もう一度情報を整理しておくとしよう。
情報屋というのは文字通り情報を売って生計を立てている仕事で、それによって飯を食えているのは凄いのだけれど、そこについては知ったことではない。情報の価値についてはあまり理解していないしね。
「……しかし、まさかそんな近所に居るとは思いもしなかったな」
大学近所の駅にある美澄ヶ丘駅から各駅停車で十五分も乗ると、繁華街が近づいて来る。
「……ここに来るのはいつ以来?」
「いつ以来と言われてもな……。あんまり来たことはないよ。ほら、ここはファッションの街とも言われている訳だし。美澄とは違うだろ?」
南山と呼ばれる地名には、若者が多く集まっている。集まるが故に、ライブハウスや服飾関係のショップ、さらにはSNS映えするメニューがあるショップなどなど……。様々なものが数多く並べられているが、何処に何があるのか把握している人間って居るのかね?
「美澄は住みやすい場所だとは思うぜ。けれどな……、やっぱ地名が綺麗過ぎるのはどうかと思うぜ。昔色々あった地名を綺麗にして住みやすくするのは良くあることだからな」
確か崖崩れが起きる地名はそういう名前になるんだっけ? だけれどその地名のままだと売れないから仕方なく名前を改称する――ってのは良くあることらしいけれどね。ま、血塗谷なんて名前の地名があったら、そこに住もうとは思わないしな。
「そうそう、そういうことなんだよなー。だから少しは住む時に調べないといけない訳だよ。美澄って地名だって、少しは変な地名だと思うだろう? 美しく澄んだ、と書くんだぞ? 綺麗過ぎて明らかに違和感を抱くことだってあるだろうよ」
「言いたいことは分かるが……、そんなことを考えていたら住まいだってなかなか見つからないと思うけれどね? それに、もう少し世間というものを知っておいた方が良いと思うけれどな……」
自分の好き勝手な感性で物事を進められるほど、人生は甘くないんだよな。ぼくはそれを痛いぐらい実感している――おかしいな、未だ大学生なのにな。五十歳ぐらい生きているみたいな多少の貫禄を感じるような気がするよ。
南山駅は、二つの路線が交わっている。だから人がより集まりやすくなる場所でもあるのだ。その場所であるからこそ、色々なものが集まっているのであって。
「……にしても、やっぱり合わねーなここには……。あたしはあんまりここには来たことねーけれどよ、来るたびに思うぜ。何でこんな違和感を抱くぐらい自分がここに見合っていねーのかな、ってことを」
「ま、言いたいことは分かるよ……。別にこんなことは気にしなくても良いと思っているのにね。思っているが故に、人間の思い込みは激しいのかもしれないし……そこについてはきちんと認識を正さなくてはならないと思うのだけれど」
で、ここから何処に向かえば良いんだ?
まさかここにやって来たのはただの観光じゃあるまいな?
「いやいや、そんなことはないよ……。情報屋が居る、って言っただろ? そいつは南山をテリトリーにしているんだよ。長く付き合いをしているならば――そいつの根城というかいつも来ている場所が何処なのかぐらいは見当がつくってもんだぜ」
「そういうもんなのか?」
「そういうもんだ……ま、あたしについてきな。少しばかりは期待してくれても良いぜ。ってか、あたしと一緒に行かないと情報屋も情報を売ってくれやしないだろーからな。あいつもきちんと吟味しているんだよな、誰に何の情報を売ることが出来るか……ってことぐらいをよ」
それは割と優秀な情報屋なのでは? 頭が良くなければそういった職は務まらないのかもしれないけれど……。
ま、そこまで言うなら致し方ない。レディ・ジャックの言う通りに、ぼくは歩いて行くこととした。
いずれにせよ、ぼくはここには似つかわしくない人間なのだから。
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