第26話 マシュマロ読み配信②

 修正――というのはかなりオブラートに包んだような言い回しではあるけれど、実際はどういう風に修正していけば良いのかという話になった時は、きっと物騒な手段ばかり出てくるのだろうな。


「さて、次のマシュマロはこちら。……レディ・ジャックのドッペルゲンガー説を聞いて、わたしもそうじゃないかと思っていました。カレンちゃんはどうしてそう思ったんでしょうか?」


 あ、ぼくの書いたマシュマロじゃないか。正確にはそれをもとにレディ・ジャックが推敲したものだけれど……、まさか四谷カレンもそのマシュマロを書いたのがレディ・ジャック本人だとは思いもしないだろう。


「おっ、さっき書いたマシュマロ? じゃねーの。それにしてもこう自分が書いた文章が相手に読まれて全世界に公開されるのはこそばゆいものを感じるな……感じねーか?」

「感じるよ。それぐらいは……。でも致し方ないことだろ、これでもしないと何も進まないんだ。レディ・ジャック、きみだってドッペルゲンガーの正体を突き止めたいんだろう?」


 それはぼくだって同じことだ。ドッペルゲンガーの正体を突き止めてどうするのかは――未だ確定していないけれど、きっと何もしないことは有り得ないだろう。


「……うーん、これ実は結構色んな人から同じようなマシュマロ来ているんだよね。情報のソースを開示できないのは申し訳ないのだけれど、こればっかりは諦めて欲しいな」


 予想はしていたが、こうあっさりと言われてしまうと少しだけ切なくなるな……。だって、これによって唯一の光が消えてしまった訳だぜ? また適当に探す旅が始まる訳だ。何処に答えがあるか分かりもしないし、結末も期間も何一つ決まっていない無謀な旅が……。


「でも、ちゃんと伝えておきたいことがあるんだよ。これは、紛れもない事実だってこと。……あたしもちゃんとしたソースを持っていないと色々と面倒臭いし。そこについては、学園の情報屋から聞いたってことにさせてね」


 そういや、四谷カレンは学生という設定だったか。にしても学園に情報通は居るだろうけれど、仮に居るとしてそんな殺人鬼の裏情報をホイホイと教えてくれるものなのだろうか?


「観測気球、或いはアドバルーンでも出しているんじゃねーの?」


 アドバルーン、ですか。


「つまり、わざと情報を出している関係者が居るとでも?」

「レディ・ジャックが複数人による犯行の可能性がある――ということを知っているのは、本人と警察だけだろう? ということは、それを何処から手に入れたんだよ、そのブイチューバーとやらは。……つまりその情報源となる存在がアドバルーンを飛ばしてあわよくば本人に辿り着こうとでもしてんじゃねーの? ま、あたしはそんな分かりやすい罠には引っかからねーけれどよ」


 やっぱり罠にかけようとしているのかな?

 警察も簡単には捕まえられないと思っているから、こうやって変化球を投げているのかもしれないけれど、しかしこう見破られている以上は捕まえることは出来ないのだろうな。出来ることなら、偽物を見つけてから捕まえて欲しいけれど。


「――にしても、レディ・ジャックはどうして人間を殺そうとしているのかな。やっぱりシリアルキラーの類いになるのだろうけれど、だとしても理由があって欲しいものだよね。まあ、だからといって理由があるから人を殺して良いとは言えないけれどさ。どんなことがあっても、人を殺してはいけないし、死んでもいけないんだ。勝手に自分も他人も命を打ち切ってはいけないのだし」

「高尚なこって。そういうことがいつまでも言えるような世の中であれば良いけれどな?」

「まあ、そう言うなって。……別に安全圏からコメントをしているだけだろ。そこも安全圏とは言いがたいところもあるかもしれないけれどさ。流石にインターネットの動画配信から住所を特定することは出来ないよな?」

「流石にインターネットの知識はそこまでは詳しくねーよ。……でも、やろうと思えば出来んじゃねーかな。するのが面倒なだけでな」

 

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