第22話 オカルト系ブイチューバー③
情報は得た。
とにかく、藁をも縋る思いでそのオカルト系ブイチューバーに話をしてみる必要がある――ぼくはそう考えた。
どうにかしてコンタクトを取れないか、とぼくは高浜に尋ねてみたが、高浜曰く、
「流石に直接話をするのは無理だと思うよ。何故なら、イベントとかでそういうのを売りにしているんだしね。実際、企業に所属しているブイチューバーがそれでやらかして厳重注意食らったりしていたし」
「それじゃメールか? 双方向で話をするにはどうしてもラグが発生してしまうが……」
「それも駄目だろうね。だって本人が直接そのメールを見る訳じゃないもん。メールを見るのは裏方の人間、って相場が決まっているからね。彼女は然程大きい規模ではないものの、それでも何人か裏方は居るだろうし」
会話も駄目、メールも駄目ならどうすれば良いんだ……。ツイッターでやり取りするのも、その流れからしたら不可能だよな?
「リプライを送る人間がどれだけ居て、実際のリプライが一日に何通来ていると思っているんだい? 一人一通って制限が課されている訳でもないし、その中から君のリプライを見つけ出して返信してくれるのは……なかなかシビアな話だと思うけれどねえ」
じゃあどうしろってんだ。
最早手詰まりな気がするが……。
そんなぼくの反応を待ってましたかのように、ニヒルな笑みを浮かべた高浜。
「……マシュマロって知っているかな?」
「……マシュマロ?」
火で炙ったら美味しいやつ?
「この文脈では違うかな。尤も、世間一般ではその通りなんだけれど……。マシュマロというのは、ツイッターと連携したサービスのことだよ。個人を特定されることなく、メッセージを送ることが出来るんだ」
個人を特定出来なかったら、今回のようなことは難しいと思うけれどな。コンタクトを取りたい訳だし。
「違うよ。メールよりもリプライよりも直接受け取ってもらいやすいんだ。個人を特定出来ないし、マシュマロのルールに則ってしか投稿出来ない。となると、そこではある程度の安全が保証されている訳。だからブイチューバーは結構それを配信で使っているんだよね。何ならそれだけで何時間も配信しているぐらいに」
成程、生配信なら編集が出来ないから、確実に安全が保証されているマシュマロを選ぶ――と。
でも、それだと読んでもらえる可能性は? 全て運任せってことか?
「このブイチューバーは……、毎週一回はマシュマロ配信をしているよ。それも全部のマシュマロに返信しているんだ。健気でしょう?」
健気――まあ、健気ではあるけれどそれで解決して良い物なのかね。健気というよりかは不器用というか――少しは手加減しても良いのに手加減出来ないところがあるのかもしれない。
「一言で言えば、登録者数も再生数も大手のそれに比べたら非常に少ないからね……。そういう風に貪欲になっていくのも致し方ないのかもしれないよ。何処までやるべきかどうかはまた置いといて。そこについては、本人のやる気次第なんじゃないかな?」
「そういうもんか? ……取り敢えず聞きたいことは終わった。そのオカルト系ブイチューバーにマシュマロを投稿? すれば良いんだな。そして、それが読まれるのは?」
「ええと、多分今晩じゃないかなぁ……。まあ安心して。今晩だけれど、放送開始までにもらったマシュマロには全て回答するのがポリシーらしいから」
幾つあるんだか知らないけれど、例えばそれが二百通とかあったらとんでもないことになりそうだな……。一通一分で片付けるとしても、解決だけで二百分はかかる。二百分って三時間半ぐらいか――流石にその量を毎週配信はきついだろうな。やりたいとも思わないだろうし。
取り敢えずそこは追々考えるとして――やるべきことは決まった。
オカルト系ブイチューバーにマシュマロを送る。
今のぼくには、それをするしか道がなさそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます