第35話 聖也のお洋服
パカパカ、アイスホースが馬車を引きながら進んでいきます。僕達はアイスホースにゆっくり乗りながら、これから行くフリップさんの家のこと聞きました。
フリップさんの家には、いっぱい魔獣がいるんだって。森や川、色々な場所で怪我をしちゃった魔獣さん達を、怪我が治るまで家でゆっくりさせてあげるの。
それから他にも、家で一緒に仕事してもらう魔獣さん達もいるでしょう。だから魔獣さんがいっぱいなんだって。
「せいくん、どうぶつだいすき!」
「そうか。どんな動物が好きなのかな?」
「えと、ぞうさんと、キリンさんと、パンダさんと」
「ぞう? きりん? ぱんだ? やはり聞いた事がない生き物ばかりだな。後でユウヤに聞いてみるか。それに、こちらの世界の魔獣についても教えなければいけないだろうし」
「あのね、あのね、せいくんは、ほかにもいっぱいだいすきで…」
聖也の大好き動物の、お話が止まらなくなっちゃいました。でもフリップは何も言わないでニコニコ、聖也のお話聞いてくれてたよ。時々独り言を言ってたけど。多分聖也は聞こえてなかったはず。うんとね、あの事を教えないととか、一般常識をとか。教える事いっぱいだなって。
教える事? 僕はタマ先生にいつも教えてもらってるけど、タマ先生もここに来るのは初めてだから、きっと知らない事いっぱいなはず。誰が先生なのかな? 僕怖い先生はやだなぁ。タマ先生は時々怖いけど。でも前にタマ先生に聞いた事があって。人間の先生の中には、いつも怒ってばかりの先生がいるって。厳しすぎるの。だから僕、人の先生はあんまり。
馬車はその後もどんどん進んで、今はあんまり家がいっぱいない場所まできました。いっぱいないっていうか、小さい家ばっかりの場所から、大きな家ばっかりが集まってる場所にきたんだ。
ここまで来るまでに、いっぱい見たい物がありました。お城から出て少しして、大きな門を通って。聖也の動物のお話が終わらないうちに、沢山家がある場所を通りました。
そこにはいっぱい人がいて、魔獣?もいっぱいね。それでとっても騒がしくみんなが動いてたんだよ。聖也もそれを見て、動物のお話は途中で終わり。フリップにあれ何?とか、そこに行きたいとか。とっても興奮しちゃって、時々僕の頭をパシパシ。でも聖也がパシパシしても、少しも痛くないからぜんぜん平気です。
それに僕も見たい物がいっぱい。とっても楽しくて、ブンブンしっぽを振っちゃいました。
だって、本当に凄いんだよ。見た事ないものばっかりなんだもん。家はみんなが住んでる家ばっかりじゃなくて、お店って分かる建物もあるんだけど、家と思った建物がお店だったり。パッと見ただけじゃ分からないんだ。
あと、お店には建物じゃなくて、外で物を売ってるお店も。物を置く台と屋根しかない、風がすーすーしちゃいそうなお店もあったんだ。強い風が吹いたら飛ばされちゃわないのかな?
あとは絵本で見た剣や槍、弓や盾を売ってるお店でしょう。なんか動きずらそうな、硬い、う~ん、鉄でできてるみたいな洋服?を売ってたり。瓶ばっかり売ってるお店でしょう。他にもいっぱいお店がありました。
「そうか! 色々あって気がつくのが遅れたな。聖也君にあう洋服が家にあったか? 息子たちのが残っていればいいが。どちらにしろ洗濯後になるしな。ユウヤの洋服は大丈夫だが。ふむ…」
また独り言を始めたフリップ。でもその独り言の後すぐに、フリップが馬車を止めました。それからすぐにアイスホースから下りて、僕達も一緒に下ります。それで馬車の方に。
「ユウヤ、ちょっと良いかい?」
騎士さんがドアを開けて、優也お兄ちゃんが馬車から顔を出してきました。
「はい、何でしょうか?」
「いや、今回の件で、一応生活に必要な物は用意していたのだが、一般成人向けの物は用意していたんだが、セイヤの分がな。まさかこんなに小さい子が来るとは思っていなくて。屋敷に向かう前に、洋服だけでも先に買った方が良いかと思ってね」
「あっ、そういえば。でも俺お金を」
「はは、それなら気にするな。これは私達がすべきことだ。それにユウヤはまだ街のことも、何も分からないだろう? ここは私に任せなさい。すぐそこに私の家族がよく使う店があるんだ」
これからみんなで、聖也の洋服を買いに行くことになりました。それを聞いたノウルは紙にパパパって何かを書いて騎士さんに渡します。そしたらその紙を渡された騎士さんは、すぐに別の、また見たことのないお馬さんに乗って、どこかに走って行っちゃったよ。
馬車は道に置いておくと邪魔になっちゃうから、馬車を置いておくと場所に移動するんだって。僕達はそのまま歩いて、フリップさんが言ってたお店に向かいます。お店に行くまでに、とっても良い匂いが。あんまり良い匂いで、フラフラそっちに行こうとしたら、タマ先生に怒られちゃったよ。
「ハハハ、良い匂いだろう。帰りに寄るから今は我慢してくれ」
本当? 絶対だよ。
少しだけ歩いて、すぐにお店に着きました。お店はとっても大きくて、3階まであるんだって。お店の前にはピシっとした洋服を着た人が立ってて、フリップにお辞儀したあと、ドアを開けてくれました。
『わぁ、広い!!』
中もとっても広かったです。広すぎて向こうに何が置いてあるか分かんないくらい。今の小さいサイズの僕なら、中で走れちゃうよ。そう思ってたら、タマ先生に走っちゃダメよって言われちゃいました。聖也も優也お兄ちゃんが走るなよって。
「フリップ様、いらっしゃいませ。今日はどのような」
お店に入ってすぐ、お爺さんと、おじさんが近づいて来ました。
僕は勇者ポチ!! 〜異世界はもふもふでいっぱい?〜 ありぽん @myuhima
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