第29話 優也お兄ちゃんもみんなの怪我も完璧に治った?

 聖也が男の人達のマネをして、優也お兄ちゃんの怪我してる所に手を当てながら、大きな声で、「怪我が治っちゃえ」って叫びました。その途端、聖也の手の所がポワッと光って、それからその光はブワッて。光が周りに飛び散るみたいに、風がブワッてなるみたいに、部屋の中の溢れたんだ。


 僕も小鳥さんもビックリです。ビックリしてるのは僕達だけじゃありません。周りで聖也お兄ちゃんを治そうとしてくれてる人達も、フリップもノウルも。それから騎士さん達も、みんなが驚いてました。タマ先生だけはやっぱりって、1人でうんうん頷いてたよ。

 溢れ出した光は止まらないまま、ちょっと眩しくてよく見えなかったんだけど。優也お兄ちゃんの足が光に包まれてる感じ?


 あと、不思議な事もありました。なかなか聖也の魔法は終わらなくて。その間に、他の人達の体の色々な所が光り始めたんだ。うんとね、調べてみたんだけど、みんなが怪我してる所が光ってるみたいなの。顔に切り傷がある人や、腕を押さえてた人、足を引きずってた人も。みんな怪我してる所が光ってました。


 そのうちやっと光が薄くなってきて。風みたいに溢れる光もなくなってきました。最初に光が消えたのは、ちょっとだけ怪我してた人達ね。ほら顔に切り傷があった人達。その人達の光が消えたんだけど。

 

 そしたら、みんなの怪我が綺麗に治ってました。治った人達はお互いにそれを見てビックリ。足や腕を怪我してた人達も、それぞれ動かしてみて。さっきまでビックリしてたのが、もっとビックリしてました。あの足怪我した人なんか、ジャンプしたり、蹴るマネしてみたり、完全に治ったみたいです。

 うん、みんな怪我が治ったみたい。よかったね。聖也の魔法のおかげだね。

 

 僕は聖也を見ます。光はおさまってきたけど、まだまだ聖也と優也お兄ちゃんの所だけは光が強くて。もしかしたら優也お兄ちゃんの怪我は酷い怪我だから、治るのに時間がかかってるのかもしれないってタマ先生が。

 それからいつの間にか、優也お兄ちゃんの周りにいた男の人達は、魔法を使うのをやめてました。それで聖也のことをじっと見つめてたよ。フリップ達もね。


 そんな聖也を見ているうちに、やっと光が消えてきました。それからすぐに完全に光が消えて。僕は近づいて優也お兄ちゃんの足を見てみます。そしたら優也お兄ちゃん足の怪我は、綺麗に治ってました。もう、ちょっとの傷もありません。


「す、凄い」


「こ、これは一体?」


「これだけの魔法が使えるなんて。この国にこれだけの回復魔法を使える者が?」


 男の人達がザワザワし始めて、周りの人達もザワザワし始めました。それを見たフリップが、誰が何をやれって指示を出して。それから今の聖也の魔法のことは、王様が話をするはずだから、それまでは外に漏らさないようにって言いました。

 騎士さん達はみんなが返事をして、それぞれ動き始めます。優也お兄ちゃんを治そうとしてくれてた人達は、そのままお兄ちゃんを調べ始めたよ。治ってるか確認だって。


 優也お兄ちゃんは体を起こした後、男の人達の質問に答えていきます。


「痛みはありますか?」


「いえ、全く」


「何か違和感は?」


「それも全く」


「では、次は立って確認してみましょう」

 

 そう言われて、お兄ちゃんが立ち上がりました。と、そしたらお兄ちゃんが、


「いてててて」


 って言いながら立ち上がったんだ。


「大丈夫ですか? どこかまだ怪我を?」


「い、いえ。固い物の上で寝ていたせいか、ちょっとこう背中と腰の辺りが痛くて」


「せいくん、できる!!」


 お兄ちゃんの話しを聞いてた聖也が、ぴょんぴょんジャンプをして、大きな声で言いました。それからすぐに、お兄ちゃんの後ろに回った聖也。うん、あれをやるんだね。でもね、優也お兄ちゃんが。


「聖也、俺は大丈夫だから、フリップさんの所に行っててくれ」


 そう、聖也に言いました。何で? 聖也ならすぐに治してくれるよ? そう思ってたら優也お兄ちゃんが、男の人達に治してもらうからって言ったんだ。ん? お兄ちゃん何言ってるの?

 それからお兄ちゃんは、男の人達に、怪我を治してもらってありがとうございますとか、凄い魔法ですねとか。あんな怪我が治るなんてとか。変なこと言ったの。

 そのお話を聞いて、男の人達が困った顔をしました。お兄ちゃんもどうしたんだろうって、変な顔になっちゃって。


「私から説明した方が良いみたいだな。と、その前に、君達の見立てでは、背中などの痛み以外、今すぐに治療しなければいけない所はないんだな?」


 困ってるお兄ちゃん達の間にフィリップさんが入って行って、話し始めました。


「はい。魔力の流れを確認しましたが、問題はございません」


「なら君達は他の患者の元に。先程私が言ったことは忘れずにな。漏らさぬように」


「はい。もちろんです」


 男の人達が部屋から出ていきました。


「さて、次はこちらだな。セイヤ君、お兄さんの痛いところを治してくれるかな?」


「うん!!」


「フリップさん?」


「ユウヤ殿、今から…」


「あの、殿はやめてください。ユウヤで良いです。それと聖也は何を」


「ああ、分かった。とりあえず、今はそのままで。君の体の痛みを治し、まずはこの部屋から出よう。このままでは話も満足にできないからね」


『そうよ。まずは貴方の、その背中の痛みを治してもらいましょう』


「え!? た、タマ? 何で話して…、え?」


『あら、余計なことしちゃったかしら。でも今のうち。聖也、お兄ちゃんの痛い所を治してあげて』


 優也お兄ちゃんがちょっとパニックになってるうちに、お鼻がピクピク、それからほっぺたを膨らませてむんってした後、聖也がフンッて気合いを入れました。

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