第28話 聖也の魔法で、優也お兄ちゃんの怪我を治そう!

 すぐにまた、今お話してた男も人達と、同じ洋服を着た人達が、5人部屋に入って来ました。フリップさんが聖也を抱っこして優也お兄ちゃんから離れて、今入って来た人達が、優也お兄ちゃんを囲みます。


「今から、この人達がお兄さんの怪我を治してくれるからな。セイヤ君はここで待っていような」


「にぃに~…」


「まず、この刺さってる、木の板の破片を抜くぞ。おそらく血が一気に流れ出るはずだ。すぐに治療を開始しろ。良いな、気を抜くなよ!」


 周りに居る男の人達が、大きな声で返事をしました。それから最初から居る人が、優也お兄ちゃんの足に刺さってる木の板の破片を見て。優也お兄ちゃんにタオル?を噛むように言いました。それから板の破片を抜くときはかなりの痛みが襲うこと。治療は全力でするけど、後遺症が残るかもしれないって。


 お兄ちゃんが静かに頷きました。後遺症? タマ先生に聞いたら、元の足に戻らないかもしれない事だって。そんなのダメだよ! ちゃんと治して! 僕はそう言おうとしたけど、タマ先生が今は静かにしてなさいって。でも、だって…。


「良いか、やるぞ!」


 一気に男の人が、刺さってた木の板の破片を抜きました。お兄ちゃんがタオルを噛んでるから声は出せてないけど、鼻で悲鳴を上げて。僕ハッとして聖也を見ます。聖也に優也お兄ちゃんの声聞かせちゃダメだと思ったんだ。

 そしたら聖也の耳をフリップさんが塞いでくれてました。僕は急いで聖也の隣に。僕を見てきた聖也は涙がポロポロ、それからとっても心配な顔してたよ。


 木の板の破片を抜いてからは、部屋の中がもっと騒がしくなりました。優也お兄ちゃんの足に向かって、手を当ててる男の人達。何かブツブツ言った後、手が光り始めたんだ。それからすぐに、今度はお兄ちゃんのお足が光り始めて。特に明るく光ってるのは、今まで木の板の破片が刺さってた所。今、どくどく血が出てます。離れてみてるけど、しっかり分かるくらい流れ出てるの。


「もっと魔力を込めろ!!」


 男の人がそう言うと、少し光が強くなりました。それでね、気がついたら血が止まって来たような? でも、優也お兄ちゃんはもう唸ってなかったけど、まだまだとっても辛そうな顔してます。


「くっ、もっとだ! 取り敢えず血だけでも止めるぞ!! もう少しで完全に止まる!!」


 僕が血が止まってきたって思ったのは、間違えじゃありませんでした。タマ先生も血が止まって来たって。でもね、それからがなかなかだったの。確かに最初よりも血は止まってたけど、見てたらまだ血が出てるのが見えて。


「何でこんなに血が止まらないんだ!?」


「この刺さってた物のせいだ。先が二股になってて、刺さったのが1本じゃなくて2本分になってたんだ。くそっ、中で複雑に刺さっていたか?」


 その話を聞いて、男の人がお兄ちゃんの足から抜いて、後ろの方に投げた木の板の破片を見ます。そしたら話してた通り、変な形の破片が。先っぽが2つになってる破片。あれのせいでなかなか治せないみたい。


「にぃに…、いちゃい、なおらない?」


「もう少しかかりそうなんだ。だが、必ず治るから、もう少し待っていてくれ」


 そう言われた聖也がしょんぼりしながら、また優也お兄ちゃんを見ました。でもね、その後すぐにハッとした顔したんだ。それで、


「ぼく、おてちゅだい!!」


 さっきまでの心配で辛い顔じゃなくなって、あとは、ポロポロ泣いてた涙をゴシゴシ拭いてそう言いました。


「ぼく、できる! えと『たいの、たいの、ちょんでけ!』できる!!」


 聖也が急に暴れたからフリップが危ないと思ったみたいで、聖也を地面に下ろしました。下りた聖也は走り出して優也お兄ちゃんの所へ。でもフリップが慌てて止めて、何なんだって。

 そういえば、聖也は魔法が使えたよね。前に自分の痛かったところ治したし。そうだよ、聖也なら優也お兄ちゃんの怪我治せるかも。


 僕は急いでフリップさんにその事を言おうとします。でもその前に、タマ先生がフリップの所に走ってて、聖也を優也お兄ちゃんの所に行かせてって言ったんだ。


「どう言うことだ?」


『今、説明してる暇はないわ。でも今の優也のあの怪我をすぐに治せるのは、聖也だけかもしれないの。時間がもったいないわ。お願い、1度だけで良いから』


「…何か、確かなものがあるのか? そしてそれは今、私と君達が会話が出来ていることと関係が?」


 あれ? そういえば今、僕達普通にフリップさんとお話してる? 今まで話なんてした事なかったのに。それに、考えたら僕が大きくなってから、僕達聖也ともお話してたような?


『ええ。確かに関係があるかも。でもそれは後の話しよ。王様が話をするはず。だから今は詳しくは言えない。でも、お願い。今は聖也にやらせてあげて』


「…分かった」


「フリップ様!」


「色々な事が起きたのは確かだ。今更、何が起きてもおかしくはない。それにできるなら早く、彼の怪我を治さなければ。おい!」


 フリップが男の人達に声をかけて、聖也のお話しをしてくれたみたい。男の人達はビックリや何だ?って顔をして、聖也を見てきました。でもすぐに少しだけ場所を開けてくれて、フリップが聖也を呼びます。ノウルが聖也を連れてその開けてくれた場所に行きました。


 タマ先生と僕も聖也の所に。タマ先生が聖也に言います。


『聖也、この前と同じことするのよね』


「うん!!」


『それじゃあ、『痛いの痛いの飛んでいけ』ってやる前に、『怪我治れ!!』ってやってくれるかしら』


「けが、なおれ!」


『ええ、そうよ。できる?』


「うん!!」


 聖也は返事をして怪我してる所に手を当てます。周りの男の人達が、早くしないといけないのにって文句言ってるけど。大丈夫、聖也は怪我も痛いのもすぐに治せるはずだから。

 

 聖也が大きな声で言いました。


「おけが、なおっちゃえ!!」

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