第27話 サラサラサラ、消える魔人

 僕の蹴りは魔人のお腹、ちょうど真ん中に当たって。『ぐえっ』か『ぐぎゃ』だか魔人の声が聞こえて、そのあと勢いよくビュッ!!って、魔人が外に飛んで行きました。

 僕は急いで壁の壊れてる所に走って行ったんだけど。うん、走ってっていうか、1歩で壁の所に。勢いがつきすぎちゃって、僕壁から外に出ちゃう所だったよ。


 それからすぐに僕を追いかけてきたタマ先生。後ろの方で聖也が僕達のこと呼んでたんだけど。ちょっと待っててね。安全かどうか確認したら、すぐに聖也の所に戻るからね。


 タマ先生と一緒に、飛ばした魔人を探します。えっと、魔神はあっちの方に飛んでいったはず。ん? あの高い屋根、穴が空いてない? 変な屋根だね。僕がそう言ったら、タマ先生がそんなわけないでしょって。あの屋根の穴、魔人が飛ばされた跡じゃないかって言いました。


 確かに僕、思いっきり蹴り飛ばしたけど、そんなに飛んでいっちゃったの? ならあそこまで行って確認しなくちゃ。


『今の貴方なら、あそこまで簡単に飛んでいけるんじゃないかしら。あそことあそことにジャンプして向こうへ行くの』


『うん! 僕やってみる!』


 僕はタマ先生に言われた屋根に飛びながら、向こうの穴の空いてる屋根に行くことにしました。それで飛ぼうとした時、聖也の声が近くから聞こえて。いつの間にか聖也とフリップさんが僕達の後ろにいたんだ。


「す、すまない。君はポチなのだろうが。あの穴を確認しに行くと今言っていたが、私を君に乗せていってもらえないだろうか。私も奴を確認して、これからの事を考えたいのだ」


 僕はタマ先生を見ます。それでタマ先生が頷いたから、僕はしゃがんでフリップが背中に乗りやすうようにしました。フリップがありがとうって言いながら、背中に乗ってきます。


「せいくんも、のりゅ!!」


「いや、セイヤ君はここで待っていてくれ。危ないからな。ノウル!!」


「さぁ、こちらで待っていましょう」


「せいくんも、のりたい!!」


『聖也、今はダメよ。あの悪い魔人を確認しに行くの。後で乗せてもらいましょうね。それに…』


 タマ先生がお話ししてる時でした。さっきまた、新しい騎士さん達がお部屋に来たんだけど。その騎士さんの、優也お兄ちゃんを木の板の下から助け出したぞって声がして。聖也はハッとして、優也お兄ちゃんの方に入って行こうとしました。それをノウルが急いで追いかけ行きます。

 

 僕達はその間に穴の所に行くことに。タマ先生も背中に乗っかって、急いで僕は前の屋根に飛びました。

 2回屋根を飛び越えて、穴の空いてる屋根に無事に着地。穴を覗いたら、完全に向こう側が見えてました。だから反対側まで回っていって。またまた向こうを見たら、時計みたいな物がついてる、大きな長い建物?が立ってたんだけど。その時計みたいな物の下に、魔人がめり込んでました。


長い建物の前に屋根があったから、そっちに移動して魔人をよく見ます。魔人の体の周りに、黒いパチパチした物が。それからね、魔人のお腹の所から、サラサラって、砂みたいな物も出てたんだ。

 1番ビックリしたのは、そのサラサラ砂が出てる所、魔人の体がどんどん消えていってたの。


『な、何故、こんな下等生物に…』


 下等生物? 何? タマ先生に聞いたら気にしなくて言って。それからタマ先生が魔人に話しかけます。


『あなた、あの方って言ったわよね。どうせ今のあなたはポチの攻撃で、これから完全に消えるのでしょうから。私達に色々話してくれないかしら』


『はっ、誰がそんなこと…。だが覚えておくが良い。確かにあの方は復活する。お前達が今のぬるい生活ができるのも今のうちだ。あの方が復活なされば、この世界などすぐにあの方の物になる』


 どんどん魔人の体が消えていきます。そして最後顔だけが残ったんだけど。


『あの方がこの世界を手に入れる、そのお姿を見る事ができずに。こんなに虚しいことはない。どうか、どうかこの世界を!!』


 そう言ったあと、サラサラサラ。完全に魔人が消えちゃいました。


『結局、いつ頃復活するか確認できないままだったわね」


「だが、ポチのおかげで、今の脅威からは守ってもらった。ポチ、ありがとう」


『うん!!』


 僕達は急いで聖也達の所に戻りました。そしたら倒れてた王様も、弟のボルドーさんも、あともう1人のおじさんも、なんとか壊れてなかった椅子に座ってて。でもすぐに騎士さん達と一緒に、部屋から出ていっちゃいました。フリップさんに王様が、後を任せるって。


 王様達が部屋を出て行ってからも、部屋の中はザワザワ。それで1番ザワザワしてて、人が集まってる場所。あそこって優也お兄ちゃんがいた場所のはず。そう思って僕が向かおうとした時、聖也の泣いてる声が聞こえました。


「にぃにぃ~、うわぁぁぁん」


『聖也!!』


 急いで部屋の中に。集まってた人達が、僕達が近づいたら慌ててその場から離れます。それでみんなが退いた所に、足に木の棒がグサって刺さってる優也お兄ちゃんが、とっても苦しそうな顔して寝てました。聖也はその横でノウルさんに抱っこされて泣いてたよ。

 あと、なんかまた見たことのない洋服着てる人が2人、優也お兄ちゃんの横にしゃがんでました。


『わあぁぁぁん! にぃにぃ~!!』


「これは酷い。取り敢えず木の枝を抜いたら、一気に回復魔法をかけなければ。大量出血で死んでしまうかもしれん」


「おい、子供がいるんだぞ!」


「あ、ああすまない。が、治療するには、もう少し人数が居ないと。取り敢えず今から急いで集めよう」


 優也お兄ちゃんの怪我が酷いから、怪我を治すために、たくさん人がいけないんだって。だからこれからその人達を呼びに行くみたい。


『ぐっ』


 優也お兄ちゃんの苦しそうな声を聞いて、聖也がもっと泣いちゃいます。誰でも良いから、早く優也お兄ちゃんの怪我を治して!!

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