第24話 魔人の攻撃
『タマ先生、あの男の人、飛んでるよ!! それにあいつから嫌な感じがする!!』
『本当にあいつから嫌な感じがするのね!?』
『うん! 絶対!!』
僕達がそんな話をしてたら、騎士さん達が僕達の前や、倒れてるお兄ちゃんの前、それから向こうで倒れてる王様や、王様の近くにいる人達の前に立ちました。あと、さっきこの部屋にいた人達何人かも、剣を持ったり槍を持ったり。それから手を出したり?して立ってます。
「魔人」
フリップが小さな声でそう言いました。魔人? 魔人て何だっけ? 絵本で同じような名前聞いたことあるような。確か魔族って。それと似てるよね。僕がタマ先生にそう言ったら、同じことだって。魔族の中の魔人じゃないかしらって。なんか、そんなのばっかりだね。みんな呼び方色々。同じなら1つで良いんじゃない?
『ポチ! 今はそんな事どうでも良いのよ! 今はしっかり聖也を守るわよ!!』
『はい!!』
危ない危ない。考え事してないで聖也の事を守らなくちゃ。僕は気合いを入れて、男に唸ります。
男はぐるっと部屋の中を見て、それからニヤっと笑いました。そして手を挙げたんだけど。挙げた瞬間、また物凄い風が吹いたんだ。さっきよりもちょっと弱くて、僕達はなんとか飛ばされなかったんだけど、騎士さん達は何人か飛ばされちゃうくらいの凄い風。
あとね変な風だったんだ。男が手を右にやると右で風が吹いて、左にやると左で風が吹いて。男が手を向ける方で風が吹くの。
変なのは男だけじゃありませんでした。剣や槍で男を攻撃する人達、それは普通だと思うんだけど。でもさっき手を出してた人達がいたでしょう? その人達の手から、風や炎、水や光、それから土や雷みたいなのが、男に向かって飛んでいったんだ。ビューッ!!って。
『アレは多分魔法よ! ポチ、巻き込まれないように気をつけて!!』
アレが魔法! 絵本で見た本物の魔法なんだ! 僕は聖也と瞳お姉さんの『痛いのとんでけ~』魔法しか見たことなかったからね。こんなにたくさん魔法ってあるんだ! 魔法と魔法で戦う、これも絵本と同じだね。
浮かんでる男はみんなの魔法攻撃を避けながら、まだまだ色々な方向に風の攻撃をしてきます。そして少しして、男が怪我をして倒れてる優也お兄ちゃんの方を見ました。
大変!! 優也お兄ちゃんを守ってくれてた、騎士さん達がとばされちゃった!! あっ、優也おにいちゃんに近づこうとしてる! お兄ちゃんを守りに行かなくちゃ。でもそうしたら聖也から離れないといけないし。どうしよう!
男はどんどん優也お兄ちゃんの近づいて、ほんのちょっと前で浮んだまま止まりました。そんな男に、部屋の中にいる立ってる騎士さん達とおじさん達が、一斉に攻撃します。でも…。
一気にみんな飛ばされちゃって倒れちゃったんだ。起きあがろうとしてもすぐに飛ばされてそのまま。立ってるのは僕達だけだよ。なんとか立ち上がろうと、壁に手をついてる人はいるけど。
『ふん、今代の勇者が、この倒れてる男だとは。これくらいの攻撃で情けない』
ん? 今勇者って言った? 優也お兄ちゃんは勇者じゃないって言ってよね。みんな僕が勇者だって。あの男間違えてるよ。僕はタマ先生に小さな声でお話して、それから男に言おうとしました。どうせ僕の言葉わからないだろうけど。
でもタマ先生は今言っちゃダメって言ったんだ。それから今考えるから待ってって。だから僕はいつでもお兄ちゃんを守りに行けるように、男をじっと見たまま、唸り続けるました。
『せっかく勇者が召喚されたと分かって、確認しにきたは良いが。これならあの方の邪魔どころか、少しの脅威にもならないだろう。とんだ無駄足だったな。まぁ、下民達に、あの方の復活を告げに来たと思えば』
男が優也お兄ちゃんから目を離して、部屋の中を見渡したあと、僕達の方を見てきました。それからまたニヤっと笑って。
『起きているのはお前達だけか? しかもそんな小さい下民まで。ちょうど良い。その小さな下民は連れ帰り、俺の食糧にでもしよう。と、そお前にそこの下民』
男がフリップを見ます。フリップは聖也を守りように、聖也を抱きしめたまま少し後ろを向いて。
『あの方がもうすぐ復活をする。お前は生かしてやるから、このことを世界に伝えると良い。そして勇者はもういないとな。これから俺に、そこで倒れている勇者は殺され、もう誰もあの方を邪魔するものはいなくなるのだ。そしてあの方がお目覚めになられたら、お前達の世界があの方の手に落ちるまで、そんなに時間はかからないだろうと』
「それはどうかな?」
『ふん、この事実は変わりようがないだろう。よしまずは…。そうだな。後で連れ帰り俺の食糧にするつもりだったが、今すぐここで食ってしまおう。そして勇者にとどめを刺し、俺達の国へ戻るとしよう』
男が聖也の方に手を伸ばしてきました。僕は聖也の前に立って思いっきり男に唸ります。タマ先生! 何か考えるって言ってたけど早く!! アイツ、聖也の事狙ってるの。食糧にするとか言ってるんだよ! 聖也は食糧なんかじゃないのに。
僕はチラッとタマ先生を見ました。タマ先生はまだ何かブツブツ言って考えてて。
男がまた少しだけ近づいてきます。聖也泣いちゃったよ。もう! 聖也を泣かせるなんて!! 大丈夫だからね。聖也は僕が絶対に守るからね。
そう思った時でした。急に体の中があったかくなったような? ううん、ようなじゃなくてあったかくなってる!
でも、どうして今だったんだろう。僕あったかくなったことが気になって、ちょっとだけ男を見てなかったんだ。そしたら一瞬で男は僕達の目の前に移動してて。最初にフリップが飛ばされて、今いるのは僕と聖也と、タマ先生と小鳥さんだけに。
男が聖也に手を伸ばしてきて、僕は男の腕に噛みつこうとしました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます