第19話 誰が勇者? お兄ちゃん? 僕? ん?

「結論から申しますと、ユウヤ殿は勇者ではございません」


 ノーマンお爺さんがそう言ったら、部屋の中が一気に騒がしくなりました。


「どういうことじゃ。ユウヤ殿が勇者ではない!?」


「陛下、これは一体どういうことでしょうか」


「アーネルよ。これは今までになかった事じゃぞ。大問題になりかねん。もしノーマンの鑑定が確かなら、なぜユウヤ殿はここへ飛ばされて来た?」


 王様の隣に居た、部屋を出て行かないで残ってた男の人2人が、立ち上がって王様に言います。僕達は小鳥さんと遊び始めたばっかりだったけど、あんまり王様達が騒ぐから、すぐに遊ぶのをやめて、優也お兄ちゃんの隣に。聖也はお兄ちゃんの洋服をギュッと握りました。

 ダメだよみんな。どうして大きな声出すの? 聖也が怖がっちゃうでしょう!


「ノーマン、本当にユウヤ殿は勇者ではないのか?」


「はい。それは間違いございませんじゃ」


 ノーマンお爺さんの言葉に、王様も他の2人の男の人もがっくりと、困った顔になって、王様も立ち上がってたんだけど、ドカッて椅子に座りました。


「なんという事じゃ。まだか勇者様ではなかったとは。ではなぜここへ呼ばれたのか」


 僕は優也お兄ちゃんを見ます。がっくりビックリ、困った顔してるのは王様達だけじゃなかったです。お兄ちゃんもなんかとっても困った顔してたの。それから誰にも聞こえないような小さな声で、これからどうなるんだって言ったんだ。


 ノーマンお爺さんはなんて言ったっけ? 優也お兄ちゃんは勇者じゃないって言ったよね。タマ先生が僕に近づいてきて、もしかしたら僕達、すぐにお城から出て行かされちゃうかもしれないって言ってきたんだ。

 何で? 僕達来たばっかりだよ。それに、これからフリップのお家にいくって、フリップ言ってたよね? 出て行かされるって、フリップのお家に行くって事? 僕がタマ先生にそう聞いたら、違うって。タマ先生もとても困った顔をしてました。


 騒がしかった部屋の中は、今度はし~んって。誰も何も話さなくなったから、とっても静かに。外の鳥さん?の声だけが聞こえました。たまに鳥さん?じゃなくて、『モ〜』って声も聞こえるけど。


 そんな静かなお部屋の中、またノーマンお爺さんがお話を始めます。


「陛下。よろしいでしょうか。まだ鑑定の結果を全てお知らせしておりませんのじゃ。勇者様ですが、この部屋においでですじゃ」


 ノーマンお爺さんの言葉に、またまた王様が大きな声を上げます。隣に居たおじさん達も、どういう事なんだって、また騒がしくなって。本当にもう、何なの!? だからみんな大きな声出さないでって、さっきから僕言ってるのに。


「確かにユウヤ殿は勇者ではございませんが、この部屋に勇者様はおいでですじゃ。そして仲間の神官様、賢者様、ナイト様も」


 また静かになったお部屋の中。ノーマンお爺さんが僕達を見てきて言いました。


「勇者様は、こちらにおいでのポチ様ですじゃ。そして賢者様はこちらの生き物、先ほどから皆様が『にゃんにゃん』と、呼ばれている方ですじゃ。また神官様はこちらのセイヤ殿。最後のナイトですが、このプロテクトバードですじゃ』


「「「「え?」」」」


 優也お兄ちゃん、王様、それから他のおじさん達2人、全員が同時に『え』って言いました。それもさっきまでの困ってる顔とか、ビックリしてる顔とか、そういう顔じゃなくなってて。みんなただただ「ん?」ってお顔なの。


 僕と聖也と小鳥さんはどうしたのって、みんなの顔をそれぞれ見ます。タマ先生は、今までに見たことがないくらい、口をあんぐり開けて、ボケっとしてる顔してました。

 僕タマ先生見て笑いそうになっちゃったよ。ううん、ちょっとクスクスしちゃったけど。だってこんなにボケッとしてる先生、初めて見たんだもん。いつもはキリっとしてるから。


 そんな僕を、タマ先生がしっぽでバシッ!!って、頭を叩いてきました。


『貴方、笑ってる場合じゃないのよ! どうしましょう、大変なことになったわ。貴方だけじゃない。私も、聖也もよ!!』


 大変? 僕が? それに聖也もタマ先生も? 僕はもう1度優也お兄ちゃん達を見てみます。そしたら王様達は今度は愕然とした顔して僕達を見てて。それから優也お兄ちゃんは…。

 優也お兄ちゃんが、聖也と僕達をみんなまとめて抱き上げてギュッと抱きしめてきました。小鳥さんは上手に聖也の頭に乗っかったまま。優也お兄ちゃんね、とっても不安そうな顔してます。


「まさか、聖夜やポチ達が勇者に関係あるなんて、そんな事あるわけがない!」


 優也お兄ちゃんが大きな声でそう言いました。王様も何回もノーマンお爺さんに、同じことを聞きます。

 そしたらノーマンお爺さんは何かを用意し始めて。ノーマン爺さんはカバンを持ってたんだけど、その中から板とちょっと白っぽい、でも透明な石を取り出して、テーブルの上に置きました。


「陛下、これについてユウヤ殿に説明をしても?」


「ああ、ああ、それがあったな。あまりのことにそれの存在を忘れておった。もちろん説明を。その後それで確認をしよう」


 ノーマンお爺さんが板と石を優也お兄ちゃんに見せてきました。お兄ちゃんは聖也を椅子に乗っけて、僕達は自分から聖也の横に飛び降りて座ります。それから板と石を渡されたお兄ちゃんが、それをじっくり眺めました。

 僕もちょっとだけ、自分の目の前に板が近づいた時にサッと触ってみたんだ。そしたらヒヤッてして、僕ピャッてなっちゃったよ。タマ先生に触らない!って怒られちゃいました。


「あの、これは? 俺は今これどころじゃ」


「分かっておりますが、ですがこれは、今起こっていることを確認する、唯一の手段なのですのじゃ。これで今のユウヤ殿や他の皆様方のことが、目に見えて知ることができるのです。今からそれをおこないますじゃ」


 優也お兄ちゃんが板と石をノーマンお爺さんに返しました。

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