第13話 なかなか開かないドア、簡単に開くドア

 大きなドアの前、ここからお城の中に入るんだって。


「にぃに、おちろ!! おちろはいる!!」


「こら聖也、暴れるんじゃない」


 聖也が、足と手をバタバタ動かして、とっても喜んでます。手をブンブン動かすから、ぬいぐるみが優也お兄ちゃんの顔にバシバシ当たって。上下、上下。バシバシ、バシバシ。お兄ちゃんが聖也を下に降ろしました。でも手はしっかり握ってるから、聖也は前のめりにユラユラ揺れちゃってるよ。


「はは、元気が出て来たか? さぁ、入ろう」


 ドアの前に居た騎士さん2人が、大きなドアを開けます。開けたんだけど、何か大変みたい。騎士さん2人共、凄い顔してドアを開けてるんだ。

 最初何ですぐにドアが開かないのかなって思って、ちょっとだけドアに近づいたら、下を向いてた騎士さん達の顔が見えて。こう、ブスッとした、顔がくちゃッとなってる感じの真っ赤な顔してました。それからお口も、歯をギギギギギって。


 そんなに重いの? 他の騎士さんにも手伝ってもらえば良いのに。聖也早く入りたくてあんまり前に行こうとするから、優也お兄ちゃんに手じゃなくて、お洋服引っ張られちゃってるよ。う~ん、誰も手伝ってくれないなら、僕が手伝ってあげようか?


 僕はすたすた歩いて、右側の方でドアを開けてる騎士さんの方へ行きました。それで騎士さんの足の所、踏まれないように気を付けて、前足でドアを押してあげたよ。

 そしたらドアがスススススって簡単に開いて、騎士さんがおっとって転びそうになっちゃったんだ。


「なんだ、オール。ずいぶん軽く開けられるようになったんだな」


 フリップが転びそうになった騎士さんにそう言いました。騎士さんの名前オールっていうみたい。オールは、


『え、あ? あの』


 って、何かとっても不思議そうな、でもビックリな顔をして、ドアを見つめてます。そしたら左の方に居た騎士さんが、オールことをじとっとした目で見てて。ブツブツ文句を言ってました。何であいつだけ?とか、同じ訓練してるのにとか。

 しょうがないな。僕が手伝ってあげるから、そっちの騎士さんも、ササっとドアを開けちゃおうよ。僕がドアを押した感じ、そんなにドア重くなかったよ?


 僕はスタスタ。今度は左の騎士さんの方に歩いて行きます。さっきみたいに足元に行って踏まれないようにして、ドアを前足で押しました。そしたらやっぱりさっきみたいに、スススススってドアが開いたんだ。それでまたまた騎士さんが、おっとっとって。

 

 ほら、簡単に開いたでしょう? 何であんな顔してドアを押してたの?


「なんだ、チョーカー、お前もか。力を付けたな」


 左の騎士さんはチョーカーって名前みたい。


「その調子で訓練頑張るんだぞ。さぁ、私達は行こう」


 フリップが先に中に入って、優也お兄ちゃんを呼びます。聖也が前のめりに歩き始めて、お兄ちゃんが洋服を放さないようにゆっくり歩いて中に。僕とタマ先生は優也お兄ちゃんの足元に付いて歩きます。

 それで中に入るときね、タマ先生が変な顔してました。どうしたのか聞いたら、さっきのドア、あの騎士さん達が開けたのかしらって。違うよタマ先生。僕が手伝ってあげて、2人で押したから開いたんだよ。


『それにしても、おかしいわよ』


『でも開いたから良いでしょう? タマ先生、ちゃんと優也お兄ちゃんに付いていかにと、置いていかれちゃう』


『何かがおかしいわよ』


 僕はお城の中に入る瞬間、ジャンプして入りました。そして入ってすぐに吠えちゃったんだ。先に入った聖也も、きゃあきゃあ、ワーワー騒いでます。

 お城の中は外もキラキラだったけど、中はもっとキラキラでした。キラキラした物がいっぱいなの。壁も、飾ってあるよく分からない物も。天井も天井で光ってる明かりも。みんなキラキラです。


 それから床もキラキラ、ピカピカで。僕のお顔が綺麗に映ってるんだ。僕がベロを出すと、それもちゃんと映って、変な顔したら、それもちゃんと映りました。変な顔、ぶしゅって顔なの。僕がこの顔すると、いつも優也お兄ちゃんが、別の犬に見えるなって笑うんだ。


「にぃに、キラキラ!! せいくん、あれみたい!」


「聖也、待て。これからお兄ちゃんはお話しないといけないんだ。それが終わってからなら…。すみません、後で色々見せてもらっても良いですか?」


「いいでしゅか!!」


 聖也が優也お兄ちゃんのまねをしてフリップに聞きます。


「ああ、勿論良いとも。ただ今日その時間がとれるかどうか? だが必ず見せるからな。セイヤ君も、ゆっくり見れた方が良いだろう」


「ありがとうございます」


 聖也はすぐに見えないって分かって、ちょっとしょんぼり。でも違う方を見て、別に気になる物があったみたいです。しょんぼりから、お目々がキラキラに、それからニコニコになりました。


「さぁ、こっちだ」


 僕達はフリップに付いて歩き始めようとして。優也お兄ちゃんがなかなか動こうとしない聖也を、結局抱っこして歩き始めました。歩き始めてすぐ、後ろでオールとチョーカーの話し声が。


「お前、いつの間にあんな簡単に、ドアを開けられるようになったんだ?」


「お前こそ、いつの間に簡単にドアが開くほど、訓練したんだよ」


「いや、なんかなぁ、急にドアが軽くなったって言うか。勝手に開いたって言うか」


「お前もか? 俺もそんな感じだったんだ」


「おかしなこともあるもんだな。まぁ、ドアを閉めば分かるだろう」


「そうだな」


 そう言う話が聞こえて、その後唸る2人の声が。またドアが動かないのかな? 後で僕がまた手伝ってあげようか?

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