第12話ペガサスさんと馬車

「お城を知っているのか? そうか。では君たちの世界にも」


「俺達の世界?」


「ああ、いや。これは向こうに行ってから話そう。そうだ。私達の紹介ばかりになってしまっていたが、君達の名を教えてもらっても良いだろうが。いつまでも君と呼ぶのもな。そちらの家族の名前は聞いていたが」


 フリップが僕とタマ先生の方を見てきました。タマ先生の名前分かるの? 聖也も優也お兄ちゃんも。それから他の人達も、タマ先生のことは「にゃんにゃん」とか、「ねこさん」とか言うんだよ。誰もタマ先生って言わない。僕達動物の言葉分からないからね。それなのにフリップは今、僕達の方を見て名前聞いたって。


「あっ、俺の名前は優也です。川本裕也。弟の名前は聖也です」


「そうか。ユウヤとセイヤか」


「ぼく、せいくん! 2しゃい!」


 聖也が手を上げて自分のことをフリップに話します。


「ユウヤ君、セイヤ君。よろしくな。それとそっちのポチと、にゃんにゃん」


 あ~、ほらやっぱりタマ先生じゃなかったよ。タマ先生もでしょうねって。いつになったらみんなタマ先生がタマって名前って分かってくれるかな? タマ先生はきっとずっと分からないって前に言ってたけど。僕はこれからも何回もみんなの前でタマ先生って言うから、いつか分かってくれるはず。


「これからあのお城に行って話をするんだ。ただ、あそこまではちょっと距離があるからな。我々は馬車で移動する。慣れていれば歩いても平気なんだが。ユウヤ達は始めてだからな」


「城で話…」


 少し歩いた後、フリップが僕達にちょっと待ってくれって言って止まりました。それでその後すぐに、僕達の前にちょっと大きな箱と、その箱を引っ張ってる見た事がない生きが、僕達の前で止まりました。箱の前にはおじさんが座ってて、生き物にくっ付いてる紐を持ってます。

 ちょっと大きな箱を引っ張って来た生き物は、お馬さんみたいなんだけど羽が生えてました。タマ先生に聞いたら、タマ先生も見た事ないって。でもやっぱり似てる生き物見たことがあるって。


『絵本で見たことがある、アレじゃないかしら』


 優也お兄ちゃんはお馬さんを見てまたまたビックリ。聖也はお馬さんってとっても喜んでて。でも聖也がお馬さんって言ったら、フリップが違うって言いました。

 このお馬さんに似てる生き物はペガサスっていう生き物なんだって。お空を飛べるお馬さん。飛べないお馬さんも居るけど、今はペガサスさんが、僕達を迎えに来てくれたんだ。お城には同じ数の、ペガサスさんとお馬さんがいるんだって。

 やっぱりそうだったよ。僕もみんなも絵本で見た、本物のペガサスさんが目の前にいるんだ。


 それからペガサスが引いて来た、ちょっと大きな箱は馬車って言って、僕達はあの箱、じゃなかった馬車に乗って、お城まで行きます。馬車…、僕これも絵本で見た事あるよ。これが本物の馬車なんだね。僕が見た馬車は、何か丸っこいのとか、ワラの塊とかが乗ってるやつだったけど、この馬車は何かキラキラです。


『ポチ、絵本で見たワラが乗っていた物は、荷馬車って言うのよ。馬車にも色々種類があるのよ。私も本ばかりで本物を見たのは初めてだけど、こんなにキラキラしてる物もあるのね』


 ノウルが馬車のドアを開けて、最初にフリップが馬車の中に。それから優也お兄ちゃんが馬車に乗ろうとしたんだけど、何か上手にのれなくて。僕達全員抱っこしてたから。フリップが先に聖也を場所に乗せようとして、聖也に手を伸ばしました。

 でも聖也嫌だって。お兄ちゃんにくっ付いちゃって。だから僕とタマ先生が先に乗る事に。待ってて聖也。馬車が大丈夫か、先に乗って確認するから。


 僕は優也お兄ちゃんの腕からピョンッて飛び降りた後、馬車にくっ付いてる階段を駆け上って、馬車に乗り込みました。僕のすぐ後にタマ先生も乗って来て。

 馬車の中もとってもキラキラでした。とっても綺麗で凄いって思ったけど、先ずは大丈夫か確認しなくちゃ。

 僕は馬車の中をキョロキョロ確認。それでタマ先生の方を見たら、タマ先生が頷いたから、吠えて聖也に大丈夫って伝えました。


「ほう、今の感じだと、この馬車が安全か確認して伝えたって感じか」


 おお、フリップ正解! 良く分かったね。すぐに優也お兄ちゃんが聖也を馬車に乗せて、自分も馬車の中に乗ります。それから椅子に座って、また僕達みんなを抱っこしました。


「ポチ達は放して大丈夫だぞ? きついだろう。馬車には魔獣が乗るからな。気にしなくて良い」


「魔獣ですか」


「そうか、ユウヤ達の世界とは違うんだったな。まぁ、それも後でだな。取りあえず放して大丈夫だ」


 それを聞いて僕達は優也お兄ちゃんの腕から抜け出して、お兄ちゃんの両隣りにそれぞれ座りました。

 最後にノウルが乗ってドアを閉めると、ガタンッてちょっとだけ馬車が揺れて、馬車が進み始めたんだ。窓から外が見えたから分かったの。


 聖也が僕の方に体を移動してきて、僕と一緒に窓から外を見ます。


「馬車だと城まですぐだからな。この綺麗な庭をゆっくり見ている暇はないが。そうだなこれも後でゆっくり見せてあげよう」


 なんか後でがいっぱいだね。フリップの言った通り、少ししたらすぐに馬車が止まっちゃいました。もう到着。さっきみたいにノウルがドアを開けて1番に馬車から下りて。さっきと同じ順番で馬車からゾロゾロ下りて行きます。それで下りたとたん。


「きゃあぁぁぁ、おちろ!!」


『凄い!! 大きい!! キラキラ!!』


『本当に綺麗ね』


 僕達の前には、さっき始めて見たときよりもドンッ!!って、大きくてキラキラでカッコいいお城が建ってました。


「にぃに、おちろ!!」


「あ、ああ、そうだな。本物の城ってこんなに迫力があるのか?」


「さぁ、付いて来てくれ」


 フリップがニコニコしながら、僕達を大きなドアなの所へ連れて行きました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る