第4話 タマ先生のお勉強と、優也お兄ちゃんの美味しいご飯

『我らがベスセラー様が目覚める』


『もうすぐ目覚める』


『我らの魔王様が目覚める』


『我らの力も、仲間も元に戻りつつある』


『もうすぐだ』


『もうすぐ…』




「本日は、今目を通していただいている書類で終了です」


「そうか。やっとか。まったくこれから食事だと言うのに。今日は久しぶりのデートなんだぞ」


「それはご自身のせいでは? 2日前までに予定通り終わらせておられれば、今このような状態にはなっていなかったのですよ」


「はぁ、分かっている。それ以上は言わなくていい。それでソフィアは?」


「下の客室で待っておいでです。先程お会いしたさい、『相変わらずなのね』と、伝言を受けました」


「はぁ」


 バタバタッ!! ドタバタッ!! ドンドンッ!!


「失礼します!! フリップ様はこちらにおいででしょうか!!」


「煩いですよ!! 一体どうしたのですか!」


「祭壇に反応が現れたと報告が!!」


「何だと!?」


      *********


 砂遊びが終わってから、僕達は少しだけお勉強をした後に、タマ先生と一緒にご飯を食べました。

 今日のお勉強は、人の生活についてだったよ。人は殆ど毎日お湯でバシャバシャしたり、それから髪の毛をいつもブラッシングしたり。バシャバシャの事はお風呂って言うんだって。それで体をいつも綺麗にしているの。そのお風呂の事を教えてもらいました。


 僕達は時々、お水バシャバシャするだけなのに不思議だね。だって僕達よりも全然フワフワな毛がないんだよ。それなのに毎日体を綺麗にするの。それにゴシゴシ石鹸で洗うんだ。あんなにゴシゴシしたら、体が痛くなると思うんだけど。でもいつも平気な顔してて。

 タマ先生は綺麗好きなのよって言ったけど。僕と同じで時々で大丈夫だよ。僕綺麗でしょう? お話ができたら大丈夫だよって伝えられるのに。


 それにね。ご飯を食べたらまた汚れるんだよ。さっきは砂で汚れたからって、お勉強が終わったらすぐに、優也お兄ちゃんが聖也をお風呂に入れました。でも今、聖也はご飯を食べてて、お顔がご飯だらけに。聖也の持ってるクマさんていう動物のぬいぐるみみたいに、お口の周りが丸く茶色になってます。それで鼻の上に赤いソースが付いてるの。


 あっ、ほら今度は、ほっぺが汚れたよ。もう! またお風呂に入らないで良いように、僕が聖也のこと綺麗にしてあげなくちゃ。

 僕は立ち上がって、聖也のほっぺをペロって舐めてあげたあと、手でふきふきしてあげました。あれ? 汚れが広がっちゃった? 良しもう1回。いつもはもうちょっと綺麗になるのに。


 でも、僕がもう1回綺麗にしてあげようとしたら、優也お兄ちゃんが僕を止めてきました。


「ポチ、聖也は大丈夫だからお前はご飯を食べろ」


 そう言いながら僕を、僕のご飯のお皿の前にヒョイって移動させて。お兄ちゃんが聖也のお顔を綺麗に拭きます。


「聖也の顔のたれまで舐めようとしてるのか。そんなに優也のご飯が食べたいのか? 確かにお前の飯はうまいが。何て言ったって、その年で自分の店を持たせてもらえるくらいだからな」


「違うんだよ。どうもポチは、聖也の顔を綺麗にしてくれようとしてるみたいなんだ。顔が汚れるとすぐに舐めて手でゴシゴシしてさ」


「なんだ、そんな事もするのか。珍しい犬だな。本当に聖也のお兄ちゃんって感じで、良い兄弟じゃないか。三兄弟だな」


「ははっ、三兄弟は別に良いんだけど。ただべろべろにされるのはな」


 べろべろ? だって綺麗にしてあげなくちゃ。僕もう何回もやってるから、聖也のお顔綺麗にするの上手だよ。今日はちょっと失敗しちゃったけど。


 そう、優也お兄ちゃんのご飯はとっても美味しいんだ。寺田のおじさんが前に、お店でご飯を作ってるってお話してて。それをタマ先生に聞いたら。人間はご飯を作って、他の家族じゃない人に、そのご飯を売るお仕事をする人が居るって、教えてもらいました。それをするとお金を貰えて、僕達のおもちゃを買えるんだって。

 お兄ちゃんのお店はカフェって言うみたいです。他にもレストランとか定食屋さんとかがあるんだって。


 ご飯を食べ終わったら、またタマ先生と遊ぶ僕達。寺田のおじさんはご飯を食べたら、すぐに帰って行きました。

 夕方になって、今度はタマ先生が帰る時間です。タマ先生をお見送りするのに、みんなで窓の前に立ちました。


「またご飯を用意してやるからな。お前は聖也やポチみたいに、上手そうに食べてくれるから、作る方としても作りがいがあるんだ」


『あら、そう? なら明日も来ようかしら』


「何だ? にゃあにゃあ言って。褒めてくれてるのか?」


 違うよお兄ちゃん。明日も来てくれるって言ってるんだよ。


「にゃんにゃん、せいくん、うれちい。あしょびきてね」


『そうね。分かったわ。明日も遊びに来るわね』


 お話してる時でした。僕の立ってる所と、聖也の立ってる所。それからタマ先生が立ってる所の地面が、フワッて光った感じがして。僕がじっと地面を見てたら、タマ先生がどうしたのって聞いてきました。


『何か地面が光った気がしたの。でも気のせいかもです』


『光る?』


 タマ先生が地面を確認。でも地面はいつもの地面でした。


『今は何ともないわね。あなたの気のせいみたい。でも、そうやって、色々気にすることは大切な事よ。じゃあ、また明日ね』


『タマ先生! 今日もお勉強ありがとうございました!!』


「にゃんにゃん、ばいばい!!」


 タマ先生がベランダから帰って行きました。本当にさっきの光り何だったんだろう? 本当に気のせい? う~ん。優也お兄ちゃんに中に入れって言われて、僕は地面を見たままお部屋の中に。

 でも、最初は色々考えてたんだけど、聖也と一緒に遊んでたら、すぐに光りのこと忘れちゃいました。

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