第5話 痛いの痛いの、飛んでけ~!!

「これほど強く、反応が出ているとは」


「すぐにでもこちらへ、やって来られるかもしれませんね」


「ああ。ノウル、これから忙しくなるぞ」


「1時間後に、大広間に集まる事になっております」


「どんな者達が来るかは分からないが、私かマンスローの所で、保護することができれば良いのだが」


「来た方々を守るためにもですね?」


「ああ。どんな者達が来るかは分からないがな」


      *********


 次の日、タマ先生はお約束通り遊びに来てくれました。寺田のおじさんは来なかったけど。でも寺田おじさんの奥さん?は遊びに来たよ。えっとね、奥さんは奥さんだって。タマ先生に教えて貰たんだけど、僕良く分からなかったんだ。僕が分からないって言ったら、家族とおんなじことだって。

 知らない人と知り合って、仲良くなって、一緒に居るようになると家族。兄弟でも家族。パパやママと一緒でも家族。色々な種類の家族があるんだって。だから寺田のおじさんの奥さんは寺田のおじさんと家族なの。


 奥さんの名前は瞳お姉さん。とっても綺麗なお姉さんです。綺麗なお姉さんだけど、初めて会ったとき、僕おばさんだと思いました。それでおばさんって言おうとして。

 瞳お姉さん、おばさんって言うととっても怒るの。寺田のおじさんがおばさんだろうって言ったら、ニコニコ笑いながら、ずっと帰るまで怒ってたんだ。寺田のおじさん、帰るときぐったりしちゃってました。

 それでね、そのお話をタマ先生にしたら、タマ先生も先生って呼ばなかったら、お姉さんって言わせてたって。ふ~ん?


 僕ね、それも分からないの。人は名前がいっぱい。お父さん、お母さん、おじさん、おばさん、お兄さんにお姉さん。タマ先生は名前じゃなくて呼び方って言ったけど、呼び方いっぱい過ぎると思うんだ。だって聖也は聖也ってお名前もあるでしょう? 僕もポチってお名前があるし。他にも叔父とか叔母とか、たくさんあるんだって。もう少しそういうのは少ない方が良いと思うなぁ。


 瞳お姉さんは、優也お兄ちゃんがお仕事でお家に居ないとき、時々来てくれて。僕達といっぱい遊んでくれます。それから隣のお部屋に住んでる佐々木さんって言うお姉さんも。今日は瞳お姉さんが来てくれました。


「聖也ちゃん、おやつですよ。さぁ、ポチもネコさんも一緒に召し上がれ」


 瞳お姉さんにおやつって呼ばれて、僕も聖也もタマ先生も、隣のお部屋からご飯を食べるお部屋に移動します。タマ先生は瞳お姉さんに足も体も綺麗に拭いてもらって。それからブラッシングもしてもらって、今お毛々がフワフワです。


「聖也ちゃん、走っちゃ…」


 ビタ~ンッ!! 聖也がお部屋とお部屋の間にある溝に、足が引っかかって思いきり転んじゃいました。お顔からビタ~ンッ!!て。

 僕とタマ先生は急いで聖也の所に。瞳お姉さんも急いでこっちに歩いてきます。僕は聖也を起こしてあげようと思って、洋服を咥えて引っ張ったんだけど。


「いちゃ、いちゃい…。ふえぇ、うわぁぁぁん!!」


 聖也は少しだけ体を起こして、おでこと膝を押さえながら泣き始めちゃったんだ。痛い? どのくらい痛いの? 僕どうしたら聖也痛くなくなる? 僕が聖也の周りで慌ててウロウロしてたら、タマ先生が慌てない!!って、僕のことを怒りました。


『大丈夫よ、瞳さんが居るわ。あなたは今は静かにしていることが大切よ』


『うん…』


 僕はタマ先生の隣に静かに座りました。瞳お姉さんが聖也を抱っこして起こしてくれて、自分のお膝に聖也を座らせます。それから聖也がおさえてる、おでこの手を放して、怪我をしてないか確認。それからお膝も。


「いちゃ、うえぇ」


「はぁ、怪我はしていないわね。聖也ちゃん、私驚いちゃったわ。でも痛いのを何とかしないと。先ずは冷たいタオルを当てて」


 聖也を抱っこしたまま、ご飯を食べる部屋に行った瞳お姉さん。タオルを濡らして椅子に聖也と一緒に座ります。それから聖也が痛がってる所にタオルをあてて、こう言いました。


「痛いの痛いの、飛んでけぇ~」


 痛いの痛いの、何?


「もう1回ね。痛いの痛いの、飛んでけぇ~」


 瞳お姉さんがそう言ったら、聖也は泣きながらお姉さんを見て。何?って聞きます。今の『痛いの痛いの、飛んでけぇ~』は、痛いのが早く治るように、瞳お姉さんが魔法をかけてくれたんだって。魔法? 優也お兄ちゃんや瞳お姉さんが、絵本で読んでくれた魔法? 

 凄い!! 瞳お姉さん、魔法が使えるの? 魔法って特別な物なんでしょう? 誰でもできる訳じゃないんでしょう? 聖也も魔法って聞いて、泣きながらだけどビックリしてます。


「まほ?」


「ええ、そうよ。痛いのが早く治る魔法。もう1回やる?」


「うん」


「痛いの痛いの、飛んでけぇ~」


 その後何回か、瞳お姉さんが魔法を使ってくれたら、聖也は泣き止んで、痛くなくなったって。とっても嬉しそうなお顔しました。

 

 それでおでこは治ったから、次はお膝だって。聖也が自分もできるかなって聞いたら、じゃあ一緒にやりましょうって、今度は聖也と瞳お姉さんが一緒に魔法です。聖也大丈夫かな? できるかな? できたら聖也も凄い凄いだね。

僕はそのまま静かに、聖也が魔法を使うのを待ちます。


「痛いの痛いの、飛んでけぇ~」


「たいの、たいの、ちょんでけ~」


「ふふ、とんでけぇ~、よ」


 聖也が何回か『飛んでけ』魔法を使ったときでした。一瞬だけ聖也のお膝をなでなでしてる手がポワッて光ったような気がして。この前の僕の勘違いの光とはちょっと違くて、何かとっても綺麗なポワッて感じ。でも僕また勘違い?

 そう思ってタマ先生に聞こうとして、タマ先生の方を見たら、タマ先生が真剣なお顔して、聖也のお膝を見てました。それで僕が話しかけようとしたら、ちょっと待ってって。


 僕ももう1度確認しようとしたんだけど、聖也がジャンプして立ち上がって。元気に『治った!!』って叫んだんだ。もうどこも痛くないって。だから『飛んでけ』の魔法終わっちゃっいました。


「本当に治ったの?」


 瞳お姉さんは少しだけ不思議な顔をしながら、でもその後すぐにニッコリして、治ったならおやつにしましょうって。僕もう1回見てみたかったんだけどな? う~ん? 

 終わったならもうタマ先生にお話しても良いよね。僕はタマ先生に話かけました。

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