第3話 みんなでベランダで遊ぼう!! 聖也は僕達とおそろい?
「ほう、これがその三毛猫か」
「ほら、あんまり近寄るなよ。警戒してるだろう」
「にぃに、あけちぇ」
「はいはい」
やっと寺田のおじさんと、のろのろ歩いて来た優也お兄ちゃんが窓を開けてくれます。僕と聖也はすぐにベランダに出て。うん、僕はすぐにベランダに出たんだけど、聖也はもたもた。でも一生懸命してるから、僕もタマ先生も早くって言いません。
聖也は今、『靴』を履いてるの。人間が足に付ける物で、これは『靴を履く』って言うんだって。人間は足に色々な物を履くんだ。それがないとお外に出られないんだって。僕もタマ先生もそんな靴なんていらなくて、すぐに外に出れるのに、人間って面倒です。
聖也はお兄ちゃんのまねして、この頃1人で靴を履こうとするの。お兄ちゃんが1人はまだ難しいって言ったけど、聖也はいつも途中まで、頑張って1人で靴を履こうとします。最後はお兄ちゃんと一緒に履くんだけどね。
「おくちゅをはきまちょ、うんちょ、うんちょ。おくちゅをはきまちょ、うんちょ、うんちょ、うんちょ!! おぉぉぉ~!?」
勢いよく履こうとした聖也。そのまま後ろにごろんです。靴はそのままお部屋の中に飛んで行きました。
「ははっ。ほらお兄ちゃんと一緒に履こう」
お兄ちゃんが靴を取ってくれて一緒に履きます。すぐに履き終わって、これでやっとみんなお外だよ。
「こんちゃ!!」
『タマ先生、こんにちは!!』
僕達は2人でぺこんって頭を下げます。
「なんだ、ポチも挨拶してるみたいだな」
そう寺田のおじさんが。してるみたいじゃないよ。僕ちゃんと挨拶してるんだよ。人間には僕達みたいな犬の声は『ワン』とか『バウッ』とか、そうやって聞こえてるからね。ちゃんと挨拶してるのに、分かってくれません。タマ先生みたいにネコは『にゃあ』とか『にゃん』って聞こえるみたいです。タマ先生に教えてもらいました。僕達は普通にお話できるから、変な感じです。
『こんにちは。さぁ、今日は何をしようかしらね』
「にゃんにゃん、これ」
聖也がお砂遊びの道具をタマ先生に見せました。えっとお家じゃなくて、外にも砂で遊べる、広い場所があるんだけど。確かえっとこれは、…そうだ! 『公園』って場所があるんだけど。優也お兄ちゃんがベランダにも、小さな砂場を作ってくれたんだ。だから公園に行かないときは、このベランダの砂場で遊んでます。今日聖也は、タマ先生と一緒に砂遊びしたいみたい。
『早速遊ぶの? 勉強は後にする?』
『うん! 聖也は砂遊びしたいからね。僕お兄ちゃんだから、僕のやりたい事は聖也の後で良いんだ』
『そう? ふふ、じゃあ遊びましょう』
「あのね、せいくん、おやまじょず」
聖也が砂を集め始めました。僕も一緒に僕は後ろ脚で砂を集めます。先生は手でシュッシュッて。
『しっぽでやった方が早そうだけれど、汚くなるのは嫌なのよね。お手入れが大変になっちゃうわ』
ちょっとだけ文句を言いながら、聖也の方に砂を集めてくれるタマ先生。そんな僕達を見ながら、優也お兄ちゃんと寺田のおじさんは、タマ先生のお話をしてました。
タマ先生に首輪が付いてないから野良猫か?とか。それにしては随分綺麗だなとか。後は種類は三毛猫であってるのか?とか。何か色々話してました。
タマ先生はそれを聞いて、野良猫って失礼しちゃうわって、ちょっと怒ってたよ。タマ先生は僕達のお家の近くに、お魚屋さんがあるんだけど。お魚屋さんこれは、人間がお魚さんを買うお店ね。タマ先生はそのお店の裏の所にある、小さな小屋に住んでるって、前に教えてもらいました。
昔は人と一緒に住んでたんだけど、途中でその人と暮らすのが嫌になっちゃって。家から出て来ちゃったんだ。それからは1匹で生活してて。でもちょっと前に、そのお魚屋さんのおばさんと仲良くなって、時々遊びに行ってるうちに、小屋に住むようになりました。
おばさんにお願いしたのって聞いたら、タマ先生自分で決めたんだって。暮らし始めてから、おばさんがタマ先生が小屋に住んだ事を知ったんだけど、何も言われなかったから。それからずっとそこに住んでるんだって。
『あの頃のことを考えるとね。今の距離が1番良いのよ』
そうタマ先生が前にお話してました。あの頃?の事は聞いたけど教えてくれなかった。でも出会ってから少しして、タマ先生は他の人達とずっと一緒に居るのは嫌だけど、僕と聖也と優也お兄ちゃんと、一緒に居るのは良いって言ってくれたんだ。
何か感じるものがあるとか。僕には分からない事言ってたけどね。でも一緒に居ても良いって言われて、僕とっても嬉しかったです。聖也は分かんないまま、僕が喜んで走り回ってたから、一緒に喜んでたけど。
「にゃんにゃん。こっち、もちょ」
『あら、もっと砂が欲しいの?』
タマ先生が聖也の方に、もっと砂を集めてくれます。
「何だ、この猫の動きは。まるで聖也の言ったことが分かってるみたいだな」
「はは、分かってるみたいか。いつもこんな感じだぞ」
だから分かってるみたいじゃなくて、分かるんだよ。分からないのは人間の方。
「こんなに懐いてるなら、飼えそうだな」
「俺もそれは考えたんだ。でも、まだ聖也達が来てからそんなにたってないだろう。もう少し聖也達がここに慣れて、それでもこの猫がここへ来てくれるなら、飼っても良いかなと思ってるんだ」
「そうか」
「にぃに! ばしゃ!!」
「ん? バケツをひっくり返すのか?」
優也お兄ちゃんがバケツに集めた砂をひっくり返して、バケツを取ったら、バケツの砂のお山ができました。それに聖也が、三角の石を置いたり、お目々を付けたり。聖也は今、お山さんをタマ先生に変えてる所です。
「えちょ、おみみここ」
お耳を付けた後はお目々を付けて、顔が完成。その後は顔の後ろの所に体を作って、しっぽも作って。
「できまちた!!」
『あら、そっくりね。ありがとう聖也。ふふ、聖也の顔も私と一緒ね。それともポチかしら。砂のお髭が生えてるわ。それに鼻も汚れているし』
僕は聖也のお顔を見ました。あっ、本当だ!! 聖也お砂で顔が汚れて、僕とタマ先生と同じ顔になってるよ。お砂で髭みたいな汚れが。お揃い。えへへ、何か嬉しいねぇ。
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