第2話 僕達とタマ先生と寺田のおじさん
「で、最近はどうだ?」
「まぁまぁって感じかな。俺が仕事の時は隣の佐々木さんの家で預かってもらってるよ。保育園に入れても良いんだけどな。佐々木さんの奥さんが是非って。最初は遠慮してんだけど。結局押しきられた」
「いつも楽しんでるみたいだぞ。この前は瞳も一緒に、水族館に行ったみたいじゃないか」
「ああ。あ、そうだ。イルカのぬいぐるみ、ありがとうって伝えておいてくれ。オレが帰って来た時にはもう瞳さん、帰ったあとだったからな」
今日は僕達の家に、優也お兄ちゃんの知り合いの人が来てるんだ。僕達が初めてこのお家に来た時に優也お兄ちゃんが呼んだ人です。名前は寺田さん、おじさんです。あの人間が使ってる小さい箱で優也お兄ちゃんが呼んだの。あの小さな箱は、遠くに居る人と連絡ができる箱なんだって。僕教えてもらったんだ。
それで今日は、優也お兄ちゃんは呼んでないけど、寺田のおじさんがお家に来て、さっきお昼のご飯を一緒に食べるってお話してました。でもお昼まではまだ時間があるから、今は2人でお話してるの。
「ポチ、いこ」
『うん!!』
聖也に言われて、僕達は隣の部屋に移動しました。もうすぐタマ先生が来る時間だもんね。そうだ。タマ先生にも一緒にお昼のご飯を食べるか聞いてみよう。
タマ先生は僕や聖也の先生なんだ。えっとね、タマ先生と始めてあったのは、このお家に来て少ししてから。僕と聖也が窓からお外を見てたら、『ベランダ』これもタマ先生にあとで教えてもらったんだけど、タマ先生がベランダに来て。
それから何回かベランダで会ってるうちに、僕達に色々な事を教えてくれるようになりましました。色々教えてくれる人や動物、先生って言うんだって。だからそれから僕達はタマ先生って呼んでるんだ。あっ、でも聖也は僕達が何お話してるか分からないけど、いつもお返事はしてるよ。
タマ先生は僕達に、色々な事を教えてくれました。先ずは人間の事。僕達と違って人間はあんまり運動ができないんだって。僕達は高くジャンプしたり、早く走ったり。人間もできるけど、僕達には敵わないんだよ。僕達凄いの。えへへへ。
それから人間は仕事っていうのをしてて、それをしないと僕達ご飯が食べられなくなったり、聖也のお洋服とか僕の首輪、それからおもちゃとか買ってもらえなくなっちゃいます。買うとか売るとかも教えてもらったけど、僕、良く分かんなかったから、また今度お勉強だって。
その他にもいっぱい色々な事を教えてもらいました。あっ、あと、遠くの人間と連絡ができる小さな箱。あの事を教えてくれたのもタマ先生です。スマホって言うんだって。
タマ先生は何でも知ってて、僕が聞いた事は全部教えてくれました。タマ先生凄いんだよ。1回も分からなかったことがありません。
だから僕はタマ先生が遊びに来てくれるの、とっても嬉しいんだ。だって、分からない事聞けて、僕はどんどん人間の事が分かって。それで聖也のことも優也お兄ちゃんのことも、もっと良く分かるようになったから。
でもタマ先生は、とっても怖い時があります。僕がなかなか分からないと、どうして分からないのって怒るの。それから忘れるのもダメ。3回まで同じこと聞いても怒らないけど、その次からはちゃんと復習しなさいって怒るんだ。だから僕は忘れないように、ちゃんと聞いた事を思い出します。でも、ご飯を食べると忘れちゃう時もあるんだぁ。えへへへ。
僕達が住んでるのは大きな四角い箱、『マンション』って言うんだけど、それの1階に住んでます。それで聖也が透明の板、『窓』って言うんだけど、窓の所に顔をペタッて貼り付けて、タマ先生が来てないか確認。僕も一緒に顔を付けて確認。聖也のお鼻がべにょってなって、僕のお鼻もべにょってなって。
窓に張り付いてから少しして、タマ先生がベランダの左側からベランダの中に入って来ました。
『タマ先生!! こんにちは!!』
『あら、あなた達また張り付いていたの? 来たら呼ぶって言ってるじゃない』
『僕、聖也に言ったよ。でも聖也分からないもん』
『確かにそうだけど。もし私が来なかったらどうするのよ。なんとか伝えられないかしら…』
「にゃんにゃん、きちゃ! ポチ、いこ!」
聖也がお顔を窓から離して、優也お兄ちゃんを呼びに行きます。僕も一緒に優也お兄ちゃんの所に。あのね、タマ先生が来たら優也お兄ちゃんが窓を開けてくれて、それでタマ先生と一緒にお勉強したり遊べたりします。勝手に窓を開けるのはダメって、優也お兄ちゃんとお約束なんだ。勝手に窓を開けるのは、とっても危ない事なんだって。
だからタマ先生が来たら優也お兄ちゃんを呼んで、窓を開けてもらいます。
「何だ、聖也?」
「にぃに、にゃんにゃん!!」
「ああ、三毛猫が遊びに来たのか。待ってろ、今開けてやる」
「三毛猫?」
「ああ。時々遊びに来るんだ。可愛いネコだぞ。それに何か礼儀正しい感じのネコだな。そう見えるだけなんだけど」
「礼儀正し?」
「いや、ご飯を時々あげるんだけど、綺麗にお皿を舐めた後、ポチの食器に貸してやったお皿を器用に咥えて重ねて、こっちに向って差し出してくるんだ」
「何だそりゃ。見ても良いか?」
「良いけど、初めての人間は警戒するかもしれないからそっと頼む。聖也もポチも、三毛猫と遊ぶのを楽しみにしてるんだ。逃げたら泣いちゃうかもしれないからな」
「分かった」
もう、お話してないで早く先生の所に来てよ。窓開けてくれないと、お勉強も遊ぶのも始まらない! 今日はご飯も一緒に食べるんだから。たぶんタマ先生、一緒にご飯良いって、言ってくれるよ。うん、たぶん。
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