第3話 お断りします

 元婚約者であり、勇者である第一王子、婚約破棄と国外追放の原因になった異世界から召喚された聖女マキ、カルサール公爵家からの除籍に反対的だった元両親や一部の使用人たちを無視して婚約破棄され犯罪者のカルサール公爵家の汚点となるレッジィーナを多くの使用人たちと結託して追い出したカルサール公爵家嫡子で元弟であり、唯一勇者と聖女の魔王討伐に協力を志願したハザードと魔王討伐に参加することが決まったレッジィーナは、話も終わったし、この場にいる者たちとこれ以上話すこともないので謁見の間あとにしようとする。


「姉上。国王陛下からの命なので今夜は姉上の実家であった我がカルサール公爵家の屋敷に泊まらせてあげますよ」


 ハザードからそう話しかけられたが泊まる気なんてサラサラない。


「結構よ。家族あるのに私の話を信じず追い出した者たちがいる屋敷に行っても貴方様も多くの使用人たちも不満でしょうし、明日から長旅になるのに私も気が休まらないものお断りしますわ」


 そう答えるとハザードは、ニヤリと笑った。


「自身の立場を理解し、断っていただけてよかったです。姉上は、厚かましい女なので、除籍されたくせにまだ家族のつもりでいて、我が屋敷に泊まることを了承するかと思っていましたよ」


 先程から我が屋敷、我が屋敷って、まだ当主はお父様でハザードは、次期当主であってまだお父様から当主を引き継いだわけでもないのに既に当主ヅラですか。


「安心してくださいな。あんな屋敷に二度と足を踏み入れる気はありませんから」


 そう言って謁見の間をあとにした。


 レッジィーナとエルメスは、宿を取らずに集合場所である城門前の脇に無限収納から小さめのログハウスを出し、扉から室内に入ると複数人掛けのソファーに向かい合って腰掛けた。


「疲れたわね」


「そうだね」


 宿を取らずにログハウスにした理由は、泊まっている宿に押し掛けて来て、何か言われたり、ゴネてやったけど、ギルドからの依頼ということで帯同に同意してやったけど、王子たちだけでは魔王討伐できる可能性は0だ。


 それにも関わらず王子たちや王子や国が差し向けて来た刺客に万が一襲撃などされたら殺られる可能性はないが面倒だ。


 許可なく入れない仕様だし、結界が張られていて中に入れると外でいくら騒がれても室内には騒いでいる声は結界で聞こえなくなっているのでログハウスの方が煩わしくないからだ。


「ジーナ、このハウスは道中も使うつもりなんだよね?」


「奴らは宿、宿騒ぐだろうし、大きな街では宿を取るつもりでいるけど、野宿も多くなるだろうからそういう時は使うつもりよ」


 エルメスから聞かれたのでそう答えた。

 勿論、宿を取ったとしても別々の宿だ。


「だよね。でも無能勇者王子、お花畑聖女、公爵家嫡子の勘違い愚弟が自分たちに使わせろって言い出すんじゃないか?」


「でしょうね」


 絶対に言い出すわね。

 でも許可しなければログハウスの中に入れない。


 お風呂やトイレ、キッチンなどもあるけど魔力の使い方を知っている者がこの国にはいない。

 だから王子や元弟、聖女だけしか使えないと勘違いしている聖魔法をなんとなくの感覚でしか使えず、他の属性は使えないし、魔力コントロールができない聖女じゃログハウスに入ってもソファーに座ったり、ベッドで寝ること以外できやしない。


 それに結界を起動できないからただのログハウスでしかないので、魔物が体当たりなどしてきたら簡単に壊れるし、野盗が襲って来たらログハウスの仕様のおかげで室内に侵入されることはないが、入れないならと火をつけられ燃やされたら外には野盗がいるから出られないとログハウス内に籠もれば丸焦げで焼死決定だ。


 だから使いこなせないただのログハウスより自分たちで用意するだろうテントや馬車の中で休んだ方がまだ生存率が高い。


 テントや馬車で寝てくれるなら魔王城に着くまで結界張って襲撃対策してあげてもいいしね。


 そんなことを考えていると訪問者のようだ。

 扉の前に立つ者が扉に付いている簡易魔力感知機に引っかかった。

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