第23話#陽斗side


お店を出て、いつものように別々にタクシーを拾おうとしたら。

直生さんが珍しく「送る♡」と一台のタクシーを止めた。





走り出した車の中で、彼女になのか酒になのか。ぼうっと酔った頭でバックシートにもたれていると、直生さんが話しかけてきた。



「いい子でしょ、理沙ちゃん。ナンバーワンなだけあるよなぁ。」



ああ。あの子ナンバーワンなのか。

甘い痺れが、また胸に広がる。







「って、俺もまだ二回目なんだけどね。

前回、倫さんに連れてきてもらったんだ。あの倫さんが、倫くん呼ばわりされてた。笑」



倫くんか・・・あの声で。


たまんねぇな。

にやける口元を、ヒゲを触るようにして隠した。







「チョコと・・・航は。」


チョコと航も?





「航は、よく会ってるみたいよ。」









・・・ああ、これか。



直生さんが今日は同じタクシーに誘った理由。


航に、付き合う彼女以外に誰かがいることはメンバー全員気づいていた。

その思いが、日に日に色濃くなっていることも。










「・・・ありがとうございました。」


いろんな意味を込めて、俺はやっと呟いた。

いーえ、と直生さんはかすかに笑い、もう話しかけて来なかった。









教えていただいて、ありがとうございました。


だけど、何となく気づいていたのかもしれない。

彼女の香りは、俺のよく知る香りだった。










航と、同じ香水。










この世界には。


分かってはいても、やめられないこともある。

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