第21話#陽斗side


彼女が部屋に入ってきた瞬間、世界はスローモーションになった。




真っ白なドレスの裾を掴んでふわりふわりと近寄ってくる様は。

子供の頃妹と見た、ディズニー映画の一場面のようだった。






彼女だけが発光体で、周りは色を失った。





“直生さん”と呼んだ声で、脳内に甘い麻薬が広がった。

鈴を振ったような、軽くて甘い音だった。




『こんばんは』と目を見据えられたときには、体が痺れた。



まさに、甘い目眩。知れば知るほど、この人に嵌っていくだろう予感がした。






両手で顔を隠して笑う仕草。


イタズラに小首を傾げて、俺を覗き込む。


ほんの一瞬、けだるそうに見せる表情には色気が薫った。










こんなに可愛い人を見たことがない。

何度も何度もそればかり思った。










今は恋はしないと決めていた俺は。

あっさり背中から、深い穴に墜とされていく。

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