第19話


温かい日が多くなった5月の夜。




「理沙さん、お願いします。」


いつものように葵ちゃんに呼ばれ、席を立った。








「VIPルームよ~♡」


るんるんと小指を立てて螺旋階段を上がる葵ちゃんに、イケメン来てるの?と問うた。



「うん♡あたし、ああいう感じに弱いのよね~!

あ、今日はもうお客さん少ないから、あたしも二階についちゃお♡」




まじですか。

葵ちゃんのタイプといえば。


(葵ちゃん曰くおネェに人気の)王道“コワモテ&笑顔が可愛い系”

まさに倫くんがどストライクらしいんだけど。



今日は誰が来てるのかな・・・













『失礼します。』




重厚な扉を開けて。

「あんた、今から一階よろしく」とボーイくんに凄んでいる葵ちゃんを尻目に中に入ると。







「お久しぶりです。」


『直生さん!』



先日、倫くんと来ていた直生さんが笑っていた。


「呼出し、ごめんね。笑

今日は指名できると聞いたんで、呼んじゃいました。」


『いえいえ~!今日は、私のお客さん少ないんです。

ゆっくり話せるだろうから、嬉しい♡』


「お酒・・・あー、あんまり飲まないんだよね?何でも好きなもの頼んでね。」




直生さんの隣に腰掛けながら、ジンジャーエール、と小さく手をあげると。

すっかり目をハートにした葵ちゃんが、ウフンと頷いた。






そのとき、葵ちゃんの目線で、直生さんの隣にいる人に気づいた。

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