第6話


バスルームは、花束を解いたようなローズの甘い香りで充満して。

何かと張ってた心が、ふわりとほどけた気がした。


いいかも。こういうのも悪くないかも。


男らしく石鹸派だったけど、深呼吸するたび気持ちよかった。

だいたい、シャワージェルっていう響きが、テンションあがるよね。


意外にも、私の心どストライクに入ってきた、思わぬお土産。





時計を見ると、もうAM2:00。イオンスチーマーのスイッチを入れて、音楽をかけようとリモコンを手にしたとき、携帯が鳴った。



やめてよー。涙

この時間にコールはなし。営業終了です、また明日。


独り言を呟き、頬杖をついたまま。ふいっと覗き込んだ画面に表示される名前。




_________《剛田 大》















濡れた髪のまま。

とりあえずディオールのマキシマイザーだけ唇に乗せて、エレベーターに飛び込んだ。


3月の深夜はますます寒くて、薄着のまま出てしまったことを、また後悔した。


エレベーターは、私を乗せて、37階からゆっくりと降下していく。




エレベーターのガラス壁から見える満月。私と一緒に降りていく。


きれい。








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