第4話#チョコside





いつのまにか、理沙子が言ってくれたんだろう。

タクシーはすぐに俺の前に止まった。



「じゃね、ラストまでがんばって。」


乗り込んで、運転手が開けてくれた窓から顔を出す。




『チョコ。』


ふわっと窓に顔を寄せて、屈んだ彼女。纏っているのは、シャネルのあの香り。


『お店じゃなくてもいいよ。話、ゆっくり聞くからまた連絡してね。』




驚いた。


いつものようにスルーされてると思ってたのに、聞いてたんだ。

「ゆっくり話したいこともあったし」と言った、今日の俺の一言。




すげぇなあ、これは惚れるわ。

六本木のナンバーワンだって忘れてたら、完全に堕ちてた。笑



彼女は、『待ってるよ。』そう笑って、『お願いします。』と運転手に軽く頭を下げた。



走り出した後部座席で振り返ると、まだ小さく手を振っている姿が見えた。







鼻先に残った、シャネルのあの香り。


この香りを、俺はよく知っている。

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