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彼と僕のことを、いつ話すべきか、と考えていた。
彼と僕の繋がりに気づいた時、なぜ、これ以上関わるのをやめようと思えなかったんだろう。
もし本当に「そう」なんだとしても、関わりたくなかった。
おまえのせいで、という気持ちがあった。
でも、もし、もしこのまま関係を続けていたら。
あの日の月の姿を、思い出していた。
彼と関わり続けることを、決めた時。その目的も決めた。
そうするべきだと思ったし、「そうしたい」と、思わなければならないと思った。
それぞれが溶け合って、濁った色をしていた。
「そうしなければならない」ということにした。
僕は本当は、月に行きたかった。
僕はただ、この町で生きていければよかった。
でも、本当はそんなのどうでもよかったんだ。
どうでもよかった。
どうでもよかった。
どうでもよかった。
全部全部全部嘘にして、石にしてあの海に沈めて、明日も同じように過ごしたかった。
久しぶりに自分の家で眠って、両親の夢を見た。雪の降る町で、二度の別れを経験した。
悲しそうに、愛おしそうに僕を見る彼らを、僕は大切に思っていたはずだった。けれど夢の中で、僕は彼らの手を離し、自分から手を離し、一歩下がった。
今、そばにいるのはあなたたちじゃない。
そう言った自分の声があまりに冷たくて、驚いて涙が出た。それを誤魔化すように、僕は彼らに伝えた。
大好きだよ。でも、ごめん、今僕の隣にいるのは、魔法使いなんだ。
薄情で、冷酷で、単純で感情的な子ども。
誰も愛してはくれないだろうと思った。
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