エピローグ 選択「はい」【再生】
「だから、俺と一緒に来てくれ、ゆら!」
ゆらは抱えていた迷いをすべて捨て去り強気に頷いた。
「任せて! 私が倒れるまで澪は倒れない! 私が支えてみせるよ!」
なぜあかりを誘わなかったのか、と聞いた。そうしたら澪は複雑そうな表情を浮かべながら、
「あいつは残っててもらえないと俺が全力で戦えない。もし……いや、きっと勝つ」
と曖昧に答えた。『もし』その言葉の続きはおそらく『もし、負けたら』。
その可能性を考えているということだ。もし負ければ死ぬ。そうしたらこの世で神に対抗できるのは神域であるあかりだけだ。死ぬ──その不安を私にさせたくなかったのだろう。まったく、これだから……。
そう思いながら彼の腕を抱きしめた。
◇ ◇ ◇
「よお、グラデルテイン」
「ワタシがここにいると情報を流してから、ずいぶん来るのが早かったね。……九条ゆらも一緒か」
黒黒とした神はゆらを見て確かに顔をしかめた。百々香にゆらを殺させようとした件しかり、ゆらは神に対抗する最善の一手となる何かがあるのは間違いない。そっと彼女の頬に触れる。
「フォロー頼むな」
「任せて」
彼女は命に変えても守ってみせる。それがこの戦場に彼女を連れてきたことへの責任。
最期になるかもしれない笑みを交わし合って澪は前に出た。
「いってきます」
戦いは始まらなかった。
澪の攻撃を完全に無視した黒い神は攻撃の主である澪さえも無視した。
神が突っ込んでいったのは九条ゆらに対して。
光速で移動する神がゆらの目の前に現れるまで二人は気付かなかった。
「やめろッ!」
声は後から付いてくるように放たれた。
黒が自分を無視してゆらを狙う。それがわかっていたからこそ、対応できた。
【
「彼女をここに連れてきたのは悪手でしかない。それはキミがここでころされるからではなく……オレが最も危惧していたことだ」
ゆらが見たのは突如眼前に迫る黒、そして血飛沫を舞い散らせる澪だった。
──また、やってしまった。支えると言いながら足手まといにしかならない。そして、今度は本当に目の前で最愛の人を失おうとしている。ダメだ。そんなのダメだ!
ゆらの光がもともと白っぽく光るアイボリー色が完全なる白へと神化する。
それが神グラデルテインが最も恐れていた状況。
「やめろ、九条ゆら。皆が創り上げてきたこの美しい世界を──壊すな」
神の声は届かない。
神の域に達した彼女から放たれる《再生》の輝気はもはや人倫や真理さえも覆してしまう。
光が白く白く、ただ白く。世界全体を包み再生させる。
「戻れ──ッ!!!!!!!!!!!!」
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