終章 それは苦い光のような
最終話 黒い神
「黒の正体は〝神〟だ。神名は『グラデルテイン』。またの名をロキ・グラデルテイン」
三度が遺した情報は全てが伝えられた。
「グラデルテインは八重日を導きアコニトムの結成や輝気の基本などを教え導いた。その後、銀行強盗を手引しその金を強奪。アコニトムの資金援助に用いた。
九条ゆら、如月弥生の殺害を条件に百々香出示の脱獄を手引した。
そして生守寛、空染三度を殺害。その独断によりアコニトムから追放された」
神──なんてものが本当に存在するなんて……。
◇ ◇ ◇ ◇
アコニトム掃討戦から一年。梅雨に湿る班室にいるのは四人。これが今の第零班の全て。一年半前に澪たちが入ってきたときと同じ顔は二人だけだ。
「仁科は元気なのか」
そう口にするのは彼の宿敵・八重日だった。澪に拘束された彼は不起訴となった。彼自身が犯した罪は皆無だった。強いて言うなら神社への不法侵入。唯一、LOSの職務放棄だけが咎められる結果となり、人員不足もあいまって最低限の給与で職務復帰することになった。彼自身は償いのないことに不服なようだったが、自分が変えた社会の選択だと受け入れた。
「あー、あたしも気になります! 楽園ってほんとに楽園なんですかぁ?」
「確かに楽園がどんなところかは気になりますね」
割ってきたのは的射瑛と幌小十郎。警察学校期間を終え、第零班へやってきてからもう九ヶ月が過ぎようとしていた。
「うん。元気みたいだよ。なんか近々こっちにくるみたい。楽園のことはそのときにききなー」
彼の現状を答える私・九条ゆら。これが今の零班の全員。
話に出ている通り、澪は羽場と共に楽園に渡ってしまった。そこで漆黒……グラデルテインを追っている。
神であるグラデルテインに輝気を届かせることができるのは全人類で二人、神域に至った澪とあかりだけだ。あかりも懲罰勤務が終われば楽園に行くことになっている。
ゆらもまた勧誘を受けている。だが、どうするか決めかねていた。
この一年半で失ったものが多すぎた。それを埋めることができずに思い悩む日々を送っている今の私がここを離れていいものか。
そんな中、澪が帰ってくる。
「黒を見つけた」
二人、他に誰もいない部屋で澪はその事実を私にだけ伝えた。
「……なんで、それを私に言うの?」
答えは分かっていた。でも、聞かずにはいられなかった。
「今回俺が戻ってきたのは独断だ。この情報を掴んだから。一人で行くか迷った。でも言ったからな。これからもずっと支えてくれって」
私は抱えていた迷いをすべて捨て去り強気に頷いた。
「任せて! 私が倒れるまで澪は倒れない! 私が支えてみせるよ!」
「そう言ってくれるって思ってた。だから──、」
彼女を、ゆらを、ともに連れて行くかどうか。それがこの物語の結末を変える選択にはならない。
だが、その選択こそが〝黒〟が恐れ、百々香に指示してまで彼女を殺そうとした理由だった。
──ゆらとともに行きますか?
>>はい
いいえ
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