第31話 永続性
「お前との決着。それが今この瞬間にオレが生きる意味」
「そしてそれに応えるのが今この瞬間に俺が生きる意味だ」
放たれた無数の氷の弾丸を水の弾丸で迎え撃ち落とす。
その瞬きするよりも短い時間の中にさらに重ねてくる氷の攻撃を文字通りすべて粉砕しながら一気に間合いを詰める。その間、足下から突如現れ俺を串刺そうとする何十何百何千の槍と弾丸を横一線に薙ぎ払い、宿敵の目の前に踊り出る。
「【花水輝】!」
そう吠えながら顔面目掛け球状の水を掌で渦巻かせた蕾をぶち込む。
ドガッ! と鋭い音を立てて玉は氷の盾に阻まれた。それに構わず右腕を振り抜く。高速回転によりドリルのように貫通力を高めた蕾は盾を貫いて穴を穿ち咲き誇る!
回避した八重が距離を取ろうと後退するところへ追い討ちをかける。
追い打ちの水の斬撃を盾で弾くも勢いを殺せず、八重はそのまま地面を転がる。
そこへ水の弾丸を連射するも案の定敵は転がり体勢を整えながら全てを迎撃した。
──交わる視線。
互いが互いの瞳に映すのは宿命の、己の全ての力をもって倒すべき最大の……。
相手の強さを否定して、自分の強さを示す。それだけが二人の共通・共有する唯一の思考だった。ここで決着をつける。いや、ここでつけるのは
『生きる意味を見つけた男』と『生きる意味を完遂した男』の戦い。
「オレが種を蒔いた蕾はやっと花開いた」
「俺は何にも関心がないと思っていた。でも、それは違った。初めからあったのに気づかなかっただけなんだ」
片や花言葉は『幸福が飛んでくる』。それは目的の世界を創り出した彼自身に。
片や花言葉は『私があなたに関心がないとでも?』それは生きる意味を見つけ、関心を得た彼自身の。
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ぶつかりあった二つの蕾。片や無数の氷の花弁を、片や大輪の水の花を、咲かせる。
煌々と咲いた二輪の花は真っ盛りと言わんばかりに咲き誇る。
お互いに咲かせた二輪の花をぶつけ合う二人の青年は神域に至って底なしの光を得た。それを尽きさせることができるのは、同じく神域に至った者のみ。二人は光が尽きるまで花を咲かせ続けた。
咲いては散り、咲いては散り、無数の水と氷の花びらが自分たちの光を反射してキラキラと舞い飛ぶ。
両者同時に光が尽きる。花が消えゆく衝撃にお互い吹き飛ばされるように真下の地面へと叩きつけられた。
距離は数歩のところ。光はもう残っていない。ならば、残された己の力で戦うのみ。すかさず立ち上がる二人。
「仁科ッ!」
「八重ッ!」
一歩出た彼は自分の敗北を知る。
それは自分が捨てた、社会への帰属による敗北。
俺が懐から抜き出し、構えたのは拳銃だった。LOSには携帯が許可され、LOSから抜けた八重が捨てた武器。それを持つか持たないか、すなわち、社会に帰属するか否かが勝敗を決した。
「オレが忌み嫌い、変えようとした社会に負けるなんてな……」
八重はその場にどかっと地面に腰を落とした。
「オレの負けだ……」
その八重は満足そうに天を仰ぐと尋ねる。
「聞かせてくれるか、お前の見つけた意味ってやつを」
「俺の……俺の生きる意味は
『生きる意味をさがすこと』
自分の生きる意味を探し続けること、見つかるかも分からない。大きいかも小さいかも、一つなのか、いくつなのかも、何も分からない。それを探していくことこそが俺が、俺自身が生きる、生きていく意味だ」
その答えに八重は目を見開いてから声を上げて笑い出した。ひとしきり笑ったあと今度は再び満足そうな笑みを浮かべながら呟いた。
「壮大だ……だが、お前らしい」
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