第12話 個人タイムトライアル

サーキットに着くと、ピットの中は既に場所取りが進んでおり、冬希が入れる場所は無くなっていた。


仕方なく、ピットの外に、おひとり様用のビニールシートを敷き、リュックを下す。


受付で参加証のハガキを出すと、計測タグとゼッケン、あとはジェル、靴下、タオルなどの入った袋を渡された。

レースに参加するだけで、色々な自転車用品が集まってくる。


計測タグは、前回はベルト付きのものだったが、今回は結束バンドで固定するものだった。

自転車を持ってきて、結束バンドでフロントフォークに、計測タグを取り付ける。


結束バンドの余った部分を、受付で借りたニッパーで切り取る。


戻ろうとすると、自転車が動かない。

良く見ると、フロントフォークと、自転車のホイールについているスポークを、一緒に固定してしまっていた。恥ずかしい・・・。


受付に、再度ニッパーと、結束バンドを貰い、一度スポークごと固定した結束バンドを切って外し、今度は気を付けて、計測タグを取り付けた。


すぐに個人タイムトライアルの集合かかかり、ピットレーン出口に集まってくる。

出場者は27人。

タイムトライアル用の自転車や、DHバーと呼ばれる、両腕を、ハンドルの中央に置けるような部品の付いた自転車の人が多く、単純なロードバイクで参加するのは、冬希を含め5~6人程度たった。


すぐに冬希の出走順が来た。

コースは一周。30秒間隔で、一人ひとりがスタートしていく。


前に出走していく人たちを見る限り、割とゆっくり走りだしているように見える。

たかが一周、全力で走らなくていいものなのだろうか。


冬希に対してカウントダウンが始まり、スタートの合図が出された。

いきなり全開で走り出す。

このまま走り切れれば、入賞も可能なはず。


と思っていたのは最初の数秒だった、

スタートしてしばらくは上り坂で、いきなり息が上がってしまった。


そして下りに入って、スピードが乗ったところで急カーブ。

コース外に飛び出しそうになる。怖い。


下りきったら、また緩やかな登りで、もう脚は無い。

脚は無いけど、走り続けなければならない。キツイ。


最終コーナー手前で、後ろのタイムトライアルバイクの人に道を譲る。

30秒後にスタートしたはずの人に抜かれてしまった・・・。


個人タイムトライアルは、ドラフティングが禁止されており、前を走る人の真後ろに入ってはいけないため、大きく避けていく必要がある。


だが、こんなアホな初心者のために、コースを大回りするロスをさせるのは、申し訳なかったので、大きく道を譲り、最後の力を振り絞ってゴールする。


27人中、20位。

思ったより順位は上だったが、冬希より遅かったのは、60歳以上と12歳以下だけだった。


次に個人タイムトライアルに出るときは、いきなり全力はやめようと思った。

あと、コースの下見って大切だなと思った。

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