第13話 クリテリウム①
個人タイムトライアルが終わった後、ずいぶん時間が空いたので、2時間のエンデューロを観戦した。
ピットの上から、コース全体が見渡せるようになっており、そこからスタートを観察する。
参加者が一番多い競技で、200人以上が参加しているのだが、やはり前回、冬希が参戦したエンデューロと同じく、スタート位置では場所取り合戦になっていた。
集合がかかる前から、多くの選手が集合位置に待機しており、集合がかかってコース内に誘導された後は、集合前からの待機組で前の方は、ほぼ埋まっていた。
前回はわからなかったが、今なら理由はわかる。
みんな、出来るだけ先頭集団に入りたいのだ。
スタート位置が後ろになればなるほど、集団が途中で途切れた時に、後ろに取り残される可能性がある。
先頭交代をしながら進む集団に、たった一人で追いつくのは、至難の業なのだ。
その代わり、先頭集団に乗ることが出来れば、ドラフティングで、かなり楽に集団についていくことが出来る。
スタート位置が、勝負の明暗を分けると言っていいぐらいなのだ。
レースはスタートし、バイクが先導していく。
前回のエンデューロと違うところは、今回はプロの自転車チームが集団を引っ張っているという点だ。
スタート前、あまりにスタート位置に密集している選手たちに「こんな状態で走れるのか。狭すぎて、みんなぶつかるんじゃないか」と思って見ていた。
しかし、プロチームの選手が、かなりのスピードで集団を引っ張るため、団子状だった集団は縦に延びて、細長くなっていた。
その後、冬希が懸念していた通り集団は、中切れ、分裂を繰り返し、先頭集団は30人程度になっていた。
そして残り10分を切ったところで、数人がアタックして、最後はバラバラになり、最初にアタックをかけた人が逃げ切った。
その後、2位の人、3位の人が、ひとりひとり、ゆっくりゴールする。
それぞれ差が開いており、ゴール前の全力勝負にならなかった。
レースは、見るだけでも色々と学ぶことが多い。
次のクリテリウムでは、出来るだけ早めに待機して、前の方でスタートできるよう。
2時間エンデューロのゴールを見届けたので、昼食をとり、自分の出番に備える。
クリテリウムは3周。
しかし、フレンドリーパーク下総の1周1.5kmと違い、今回は1周2.4kmもある。
7.2kmは、全力で走るには長く、じっくり構えるには短い気がする。
やはりスタート位置は重要だと、早めに集合位置に並ぶ。
既に5~6台の自転車が置いてある。
冬希も、通行の邪魔にならない位置に、自分の自転車を丁寧に倒して置いた。
集合がかかり、コースに誘導される。
コース幅が広いので、冬希は最前列になった。
最前列から、後ろを見る。
コース幅は広いのに、整列すると、だいぶ厚みのある隊列になっている。
たしか、エントリー数は96名。会場に来ていない人もいるので、実際には、それより少ないのかもしれないが、それでもかなりの人数だ。
緊張してくる。
もうすぐスタートだ。
コースの横をすり抜けて、プロチームの選手が、スタートを待っている集団の前に並ぶ。
7人いる。
この人たちがきっと、先頭集団を引っ張っていくのだろう。
今回の大会で、MCを務めている人がカウントダウンを始める。
緊張が最高に高まる。
号砲が鳴り響き、クリテリウムが始まった。
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