第2話 神崎高校について調べてみる

私立高校で、入学金、施設費、授業料とかなり高い。

ただ、これは何とかなると思われる。

神崎高校に合格したとなれば、うちの両親は出してくれるだろうという確信が、冬希にはあった。


問題は入試に合格するにはどうすればいいかということだ。


今から猛勉強して受かるかというと、それは難しい気がしていた。

今までだって、手を抜いて勉強してきたわけではないのだから、勉強時間を2倍や3倍にするには、1日24時間では足りなくなってしまう。


普通科と、2年前に新設された情報システム科があり、情報システム科は、普通科ほど偏差値は高くない。


ITエンジニアになる人材を、早い段階から育成しようという目的で、作られたらしい。

ただ、今の冬希の学力ではまだまだ足りない。


「詰んだ・・・。一手詰めだ」


不貞腐れてリビングのソファーでゴロゴロしてたら、昼寝をしていたらしい、冬希の姉が、2階から降りてきた。

「いやー、シンデレラのように寝てたわ」

「いや、眠るのは白雪姫だろ・・・」


大学生の姉、美雪は夜遅くまで、居酒屋でバイトをしていたらしい。

「お客様は神様」と言ってやまない居酒屋の大将から、「神殺し」という二つ名をつけられている。

我が姉ながら恐るべき女だ。


「ねーちゃん、学力的に厳しい高校に受かる方法ってなにがあるんだろ」

「合法的な方法で?」

「合法的な方法でだよ!!」

合法的じゃない方法が何かは怖くて聞けない。


志望校が神崎高校であることを伝えると「あんた、身の程知らずだね」と苦笑しつつ、タブレットで色々調べてくれた。


「今年からスポーツ推薦で、若干名だけど募集するらしいよ。自己推薦だって」

「スポーツ推薦かぁ。でも俺、柔道弱かったしな・・・」

「柔道は募集無いよ」

「じゃあ何だったらあるの?」

「これ」

両手を猫のようにして、「ちりんちりん」とやってる姉。うーんわからない。

「自転車部だって」


タブレットの内容を見せてもらうと、自転車部に限り、スポーツ推薦の募集があるらしい。


選考方法はセレクションと学力試験と面接。

スポーツ自転車の競技は人気で、県内でも多くの草レースが行われているし、高校の全国大会は連日テレビ中継されるぐらいだ。


神崎高校は昨年、千葉県で2位で惜しくも全国大会出場は出来なかった。


「そこで優秀な人材を集めようという寸法なのだよ、明智君」

「え、だれ?」

ツッコミを無視してふむふむとタブレットで調べ続ける姉。頼りになる神殺し。


「神崎高校はスポーツもそこそこ有名だった気がするけど、なんで今年から、しかも自転車だけなんだろう」

「さて、私立だし、いろいろ偉い人の思惑があるんじゃない?」

「考えてみるよ。助かった。ありがとう。さすが神殺し」

「ちょっ、次のその二つ名で呼んだら殺すからね」

殺すのは神だけではないらしい。

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