第5話 Come Across 【Friend】
202X/4/14 木曜日 早朝
私の意識が覚醒する。窓の外を見ると、日が昇っていた。
目を擦り、手に取ったスマホの電源を入れる。すると、知らない連絡先―Aのものだと思われる―が追加されていることに気づいた。
「…あのことが夢だったら楽だったけど、んな訳ねぇよな。」
変な依頼を受けちまったな。本当に面倒くさい。
私も高校生だしさ、高校生らしい生活をしたいのよ…
いや、私って高校生らしいことしてるか?リアルの友達少ねぇし、授業まともに聞いてねぇし、家帰ってもPCにしか向かってねぇし、部活にも入ってねぇし…
「…部活くらい入るか…」
202X/4/14 木曜日 放課後
学校の掲示板に付けられた新入部員募集の張り紙を一通り見てみた。ただ、私の求める条件に当てはまる部活はあんまないな。
私が部活動に求める条件は主に二つ。
まずは出席が任意制であること。部活動に縛られて他にやらなくちゃいけないことが出来なくなるなんて馬鹿らしい。全国大会とかに出ているところなどは、出席が義務付けられていることが多いので入りたくはないな。
次に運動部ではないこと。不慮の事故とかで怪我したら支障が出る。突き指とかそんくらいなら良いけど、骨折ったり靭帯傷つけたりしたらマジで予定が狂うからな。
「一年坊、どうした?良いところが見つからないのか?」
掲示板とにらめっこしながら考えていると、不意に背後から声をかけられた。
振り向くと、黒い長髪をポニーテールにして一つに纏めた、身長180cmくらいでグラマラスな体型をした女子生徒が私のことを見ていた。上履きの色を見るに…私と同じ二年生か。
「…私、二年生。」
私がそう言うと、彼女は驚いた表情をし、私の足元を見る。
「…本当じゃねぇか。間違えて悪ぃかった。
まぁ、なんと言うかな…」
彼女は気まずそうに言葉を濁す。
まぁ、言いたいことはわかる。私とこいつ、身長差40cmくらいあるし。色々とデカいこいつと、貧相な体つきの私が並んでも同年代とは思えないだろう。
「ところで、部活動の募集なんて見て何してたんだ?二年生ならとっくの前に部活に所属してるだろ。」
…そうか。例外を除いて、二年生はとっくに部活に入ってるのか。だから、ここでじっと部活動募集の掲示板を見つめる私のことを一年生だと間違えたのか。
「私、最近転校してきた。から部活探してる。」
私は、事情を説明する。
「…んじゃ、オレ達のところに来るか?
一応、新入部員をかっさらって来いって部長さんから言われてんのよ。」
元から、私に話しかけてきたのは勧誘が目的だったのだろう。彼女は自分の所属している部活動のプレゼンを始める姿勢へと切り替えた。
「…何部?」
「バンド。」
部活動をやっている様子を見たが、悪くない。
まず、怪我をすることが稀。まぁ運動部じゃないし当たり前っちゃ当たり前だが。
次に、出席が任意制。バンドグルーブや年代によっちゃぁ世界一のバンドグループ?的なやつを目指すらしいんだが、今年はそんな雰囲気のところがない。
しかも、部員全体の団結感?的なのが薄く、マジで緩い。休んでも気にしないし、幽霊部員も馬鹿みたいにいるらしい。
「決めた。ここにする。」
私は、私をここに連れてきたやつにそう言う。
「唐突だな。こっちとしちゃ願ったり叶ったりなんだが、もっと悩んだりしないのか?」
新入部員が出来たことを喜んでいる顔をしているが、軽率な私を心配したのか彼女がそう聞いてきた。
「部活をわざわざ探している時間ないし、こんくらいしか不定期に来るような部員を歓迎してくれるところないでしょ?」
私は、私なりの意見を率直に話す。
こんなデカくて部活も沢山ある高校で、ここに近い条件を持つ部活を探すのは骨が折れるだろう。
「わかった。んじゃ、次にここを開ける日―土曜日にここに来てくれ。入部届けを渡す。」
私は肯定の意味を含めて首を縦に振った。
―土曜日、明後日か。予定を開けとかないとな。
「そういや、名前を聞いてなかったな。」
ハッと、何かを思い出したかのような素振りをして、彼女がそう聞いてきた。
「坂城黒江。キミは?」
「
彼女は―シホは笑みを浮かべながらそえ答えた。
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