第3話 Agreement
202X/4/13 水曜日 放課後?
『…やっと繋がった。
お~い!!起きろ!!』
謎の機械音声に起こされ、私の意識は覚醒する。
状況確認のため、辺りを見渡すと、眼前には異様な光景が広がっていた。
血のような赤黒い色が空一体に広がり、崩れ廃れたビル群が辺り一面に立っている。
人がいた気配は感じられず、まるで世紀末かなにかかのような光景。
私は、そんな光景に嫌悪感と恐怖心を覚えた。
『…反応がないってことは、もしかして聞こえてない?これは世界の構築状況にミスがあるか?』
私が辺りを見渡していると、再び、さっきの機械音声が頭の中に響きわたってきた。
「…誰?」
『!良かった、繋がってた!
…ウチはA、君をここに連れてきた者さ!』
Aと名乗った人物(?)は私の問いにそう答える。
…あまり大きな声で喋んないで欲しい。直接脳に音が響き渡るせいで頭が痛い。
「…えっと、ここはどこ?」
彼女は、私をこの世界に連れてきた張本人だと自分で言っていた。それならば、この世界のことは誰よりも知り尽くしているはず。
『―君が思考するときに出る脳波のパターンを特殊な演算装置が読み取ることで構築した仮想現実空間―簡潔に言っちゃうと、ここはくろっちの精神世界だね。
くろっちに送ったメールに、この世界へ誘う催眠コードを仕込んどいたんだよ。』
演算装置で割り出した仮想現実空間―私の精神世界―か。こんな世紀末みたいな廃墟がね。
「私をここに連れ込んだ理由は?」
わざわざこの世界に連れてきて、見ず知らずの他人である私にこの世界のことを教えた。
多分、これは取引だろう。何故、私を選んだのかの理由まではわからないが。
『この世界の形は、この世界を形創る者の認識に引っ張られる―花が好きな人の世界では花が咲き誇るようになり、海が好きな人の世界は大海原になったりする。
逆も叱り、この世界の形が変わると、現実の人間が持つ認識に影響が出る―この世界で美しい物が壊れると主の心が荒み、醜い者が壊れると主の歪んだ欲望が消える。
ここまでの説明で、君はこの世界の価値がわかったかな?』
ああ、これがとても恐ろしい代物だってことはな。
この世界が現実の人間に与える影響の大きさによってだが、他人の暗殺や、廃人化、洗脳紛いのことすら出来てしまう。
『ただし、その世界へ入れる人は少ない。特に、他の人の世界へ干渉出来るような奴はごく一部だ。
さらに、その世界はとても危険。部外者を
排除しようと巡回する奴がわんさか存在している。しかも、その世界で負った怪我が現実世界でどんな影響を及ぼすかがわからない。』
人の制限と、差し迫る危険か。まぁ、デメリットがあって当然だろう。
こんなものがホイホイ使えてしまえば、民主主義の法治国家が終わりを迎えてしまう。
―ただ、私がこの世界に入れているということは―
「つまり、この世界を行き来する才能がある私に、
…私があなた達に協力するメリットは?」
利益もないのに何故、わざわざ命の危険を犯さなくっちゃいけないんだ。
私は大金を持っているし、罪を犯したわけでもない。仕事する意義がない。
『勿論、無償で働けとは言わない。今年の末までウチ等の手足として働いてくれたなら、君の望むものを何でも用意しよう。』
何でもか。はたして、本当に出来るのか。
…ただ、信じてみるのも面白そうだな。諦めてたことが、出来るようになるかもしれないし。
「いいよ。君らの計画に乗ろう。
よろしくな、共犯者。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます