第2話 Appeal


202X/4/13 水曜日 放課後?


「では、これから被告人、【坂城黒江】の裁判を開始する!」


 朦朧とする意識の中で声が聞こえ、私は目を開け、辺りを見渡した。ここは、裁判所か?

 しかも、何故か腕に手錠がかけられているし…


…これは、夢、か?


『始めに、検察側から、彼の者の罪についての説明を。』


 立ち位置的に裁判長かと思われる、白い髪や髭を携えた老人が言い放った。


 そして、白いスーツに身を包む、鋼鉄の肉体を持つ人物が立ち上がる。


『かつて彼女は、―――――!!』


 検察側だと思われる彼が口を開いた途端、私はものすごい耳鳴りと激しい頭痛に襲われた。

 まるで彼の言葉を聞きたくないと、体が拒絶するかのように。


『見てください、今の彼女の悶え苦しむ姿を。必死に現実から逃げようとする姿を。』


 白スーツの男が、痛みで頭を押さえる私を指さしてそう言う。


『続いて弁護人、彼女の弁護を。』


 弁護側に座る、黒スーツで身を包む、鋼鉄の体を持った黒髪の女性が立ち上がった。             


『彼女の行為は、誰かがやらなくてはいけなかったことでした。

 あのままでは他に被害が生まれてしまう、必要な事でした。

 彼女に、罪を償う必要はない。』

 

 黒いスーツの女が、そう言葉を紡ぐ。


『そう断言出来る証拠は?』

     

『彼女の心が、私が保証します。』


 彼女の言葉で、しばしの沈黙― 


『判決、彼女には、—――――の罪に下す。』


 しかし、彼女の言葉は届かなかった。無慈悲な老人は、私に罪を下す。


『―でしたら、上告致します。』


『上告、か。彼女の罪を無くす自信があると。』  


 黒スーツの女の発言に、老人は一瞬驚いた表情をし、直ぐに表情を消してそう言った。


『それでは、次の法廷で。』


 老人の一言で、空間が歪み、崩れ始める。

 老人と、白スーツの男は、崩れ行く空間から去っていった。


『…そこの君、確か名前は【坂城黒江】と言ったかな?』


 その状況化、ただ一人残った黒スーツの女は私の元に駆け寄り、その腰を下げ、私に声をかけた。


『…君は、自らに着せられた冤罪を晴らしたいと思わないか?自らの過去を知りたくはないか?絡み付く枷から逃れたいとは思わないか?

 君が私に協力してくれると誓うなら、私は君への協力を惜しまない。』


 黒スーツの女がそう言い、私に手を差し伸べてくる。

 激しい頭痛で朦朧とした意識の中、この頭痛の原因、そして治す方法を、彼女なら知っていると直感的に思ったので、私は差し伸べられた手を取った。   


『私は、贖罪の天使、【傲慢】の名を冠する者、【ルシファー】。そして、君の共犯者だ。』 


 彼女―ルシファーのその声が聞こえると共に、私はまた意識を失った。                                                                                                                    

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