第14話 相馬さんの家
相馬さんが運転する車で家に向かう。
ついさっき恋人同士になったけど、実感がない。
ただただ沈黙の車内に緊張する。
相馬さんの家に着いた後に起こることを想像すると、益々緊張してくる。
「社長、着きました。大した家じゃないですが。」
大した家じゃないという割にはお洒落なマンションだ。
車の中からマンションを見上げていると、相馬さんは運転席を降りると助手席のドアを開けてくれる。
こういうのには慣れないから気恥ずかしい。
こんなことならさっさと車から降りれば良かったと後悔しながらも、ありがとうございます、と御礼を言いながら車から降りる。
「ここの8階に住んでます。男の一人暮らしなんで汚いところには目を瞑って下さいね。」
相馬さんはそう言いながらエレベーターに乗り、8階に着くと家のドアを開ける。
「どうぞ。」
「お邪魔します。」
緊張しながら家に入ると、シトラスの香りがふわっと鼻を擽る。
いつもの相馬さんの香りだ。
あまりキョロキョロしないようにと思いながら、家の中を見渡す。
モデルルームかと思うほど、家は綺麗だ。
モノトーンで統一された家具やインテリアがお洒落だ。
私の家の方がよっぽど汚い。
家に呼ぶ前に大掃除しないといけないなと考えていると、
「シャワー浴びますか?かなり汗かいたでしょ。その間、簡単に食べるもの用意しておくので。」
シャワーと聞いてドキッとする。
「着替えがないので。」
何と答えれば良いか分からず、適当なことで誤魔化す。
「Tシャツとハーフパンツでよければ、俺の貸します。」
と言って、奥の部屋から着替えを持ってきてくれた。
確かに汗で気持ちが悪かったし、ここまでしてくれたのに断るのも悪いと思って着替えを受け取る。
「お風呂場はあそこのドアの奥です。簡単なものしか用意できないけどよかったですか?」
「さっき貰ったパンがあるので、それを一緒に食べましょう。」
と言って、そそくさとお風呂場に避難する。
相馬さんの車に乗ってから、今に至るまで心臓が爆発しそうだ。
まさかこんな展開になるとは思ってもいないので、お風呂場で自分の下着を見て、がっくり肩を落とす。
こんなことなら気合の入ったセットアップを着てこれば良かったと後悔するも、よこしまなことを考えている自分に恥ずかしくなる。
急いでシャワーを浴びる。
シャワーを浴びて、相馬さんのいる部屋へ行くと相馬さんと目が合う。
目が合うもすぐ逸らされてしまう。
持ち合わせの化粧品で簡単に化粧をしているが、不細工だっただろうか。
急に不安になる。
「早かったですね。ドライヤーの場所分かりましたか?」
私を見ることもなく相馬さんが話かけてくる。
「場所が分からなかったので、教えてもらってもいいですか?」
相馬さんに案内されてドライヤーの場所を教えてもらう。
「俺が乾かそうか。」
そう言うと、相馬さんが髪を乾かし始める。
洗面所という密室に2人きりでいるのが緊張する。
緊張をほぐす為に、何か話さなきゃと口を開く。
「シャンプーお借りしました。相馬さんと同じ香りが自分からするなんて変な感じです。」
笑いながら言うと、鏡越しに相馬さんと目が合う。
目が合った途端、乾かしてくれていた手を止めて
「料理の途中でした。後はお願いしても良いですか。」
そう言うと、私にドライヤーを手渡して行ってしまった。
何かまずいことでも言ってしまっただろうかと思いながら髪を乾かすも、何がいけなかったのか全く分からない。
髪を乾かし終えて、恐る恐る部屋に戻るといつも通りの相馬さんが席に座っている。
「社長、何か飲みますか?と言っても缶ビールとカクテルぐらいしかいですが。」
机の上にはさっき貰ったパンの他にチーズやサラダが並んでいる。
相馬さんの女子力の高さに驚く。
「缶ビールでお願いします。」
言ってから、カクテルと言った方が可愛かっただろうかと後悔する。
「座って待ってて下さい。」
そう言って席を引いてくれたので、大人しく席に座る。
缶ビールを手にした相馬さんが戻ってくると、
「さぁ、食べましょうか。簡単なものしかなくて申し訳ないですが。」
「簡単なものなんて、とんでもない。相馬さんの女子力の高さに驚いてます。」
本心を言うと、相馬さんは恥ずかしそうに笑っている。
その笑顔がなんとも言えず、可愛らしい。
向かい合って座って食事するなんて、何をしゃべったら良いのだろうかと思っていたが、相馬さんが気を遣って色々話してくれる。
お姉さんの事やサーフィンのこと、仕事以外の話もたくさんした。
ほぼ食べ終えたので、用意してもらってばっかりでは悪いと思い
「洗い物は私がします。」
と席を立つ。
「洗い物は食洗器がしてくれるから大丈夫ですよ。食器は全部食洗器対応のものですし。」
相馬さんの女子力半端ない。
ここでも意外な一面が見れた。
一緒に食べ終えた食器を食洗器に入れ終えると、手持無沙汰になる。
「俺シャワー浴びてきてもいいですか?社長はそこのソファーでテレビでも見てて下さい。」
と言ってリモコンを渡される。
相馬さんは奥の部屋から着替えをとってくると、ささっとバスルームへ消えていく。
言われた通りソファーに座り、テレビをつける。
特に興味もないお笑い番組をぼーっと見る。
ここまでのところ、甘い雰囲気になることは一切なかった。
ちょっとだけ期待していたので、少し残念な気もする。
まさか、私に色気が無さ過ぎて襲う気にもなれないのかと自信喪失になる。
ソファーに座り落ち込んでいると、相馬さんがシャワーを終えて出て来た。
「社長、ビール飲みますか?」
声を掛けられて後ろを振り返ると、髪が少し濡れて色気ムンムンの相馬さんがいた。
あまりの色気に直視することが出来ず、慌てて視線をテレビに戻す。
返事をしない私に相馬さんが再び聞いてくる。
「ビールじゃなくてカクテルにしますか?それともジュース?」
とにかくアルコールの力を借りないと、と思いさっきの反省も忘れて
「缶ビールで」
と言っていた。
缶ビールを手にした相馬さんが、どさっとソファーに座る。
微妙に距離を空けて座ったのが気になる。
一人分空けられた空間に寂しさを覚える。
手渡された缶ビールを受け取ると、寂しさを誤魔化すためにビールを一気に飲む。
「社長、お笑い番組好きなんですか?」
お笑い番組を見ていたので好きだと思ったんだろう。
「特にそういうわけじゃないですが、テレビを付けたらやっていたので惰性で見てました。」
「あんまりお笑い番組を見ないので久々見ると面白いですね。」
と言いながら、テレビを見始める。
そんな相馬さんを見てイライラした気持ちが出て来る。
さっきから社長社長と言われるのも気に障るし、2人きりなのにテレビに夢中なのもムカつく。
そんな気持ちもあってビールがどんどん進んでいく。
アルコールの力もあってか、テレビ夢中になる相馬さんを見て限界に達する。
「相馬さん、社長って言うのやめてくれませんか?」
いきなり私が言ったもんだから、相馬さんは驚いた顔をしてこちらを見ている。
「そうですよね。じゃぁ、高梨さん?高梨さんってのも変か。」
相馬さんが一人でもにょもにょ言っている。
アルコールの力はすごい、相馬さんに言った言葉に自分で驚く。
「真理のことは真理さんって呼んでるので、私の事も下の名前で呼んで下さい。」
相馬さんがさらに驚いた顔をしてこちらを見ている。
「それじゃぁ、凛って呼ぶ。ついでに敬語じゃなくてもいいよね?俺の方が年上だし。」
いきなり攻めてきた相馬さんに、今度はこっちが驚く。
たじたじになりながらも、
「そうですね。それでお願いします。」
「凛も敬語辞めて。それに俺のことも相馬さんって呼ばないで。」
相馬さんのあまりの変わりように驚く。
そして思いもしなかった展開に、さらにたじたじになる。
「そうですね。そうします。」
「そう言ってる先からすぐ敬語。」
指摘されるも、いきなり洋平さんなんて呼べないし、ため口でしゃべるのもできない。
アルコールの力をと思って缶ビールを探すも、机の上にあるのは空き缶ばかり。
諦めて今度は私がテレビに集中する羽目になってしまった。
テレビに集中している私に相馬さんは何を思ったのか、自分の膝に私の頭を乗せてきた。
俗に言う、膝枕ってやつだ。
突然の行動に心臓が破裂しそうな勢いだ。
緊張して体は石のようにカチコチに固まっている。
そんな私を知ってか知らずか、相馬さんは私の髪を触り始める。
「俺の服着た凛、可愛すぎる。見ると自制心が抑えられ無さそうで見れなかった。」
相馬さんが私のことを見ないと思っていたが、これを聞いて理由が分かった。
さっきまで甘い雰囲気なんて一切なかったのに急に雰囲気が変わりドキドキする。
髪を触る時に時々耳に手が触れる。
耳に弱い私は触られる度に体が熱くなる。
髪と耳を触る手と膝枕から伝わる相馬さんの体温におかしくなりそうだ。
ぎゅっと目を閉じて、自分に冷静に冷静にと言いきかす。
「ねぇ、、、」
急に相馬さんから声を掛けられてびっくりする。
ぎゅっと瞑っていた目を開けると、目の前に相馬さんの顔があって更に驚く。
そんな私にお構いなしに相馬さんは言葉を続ける。
「キスしていい?」
目の前にあった顔がどんどん私に近付いてくる。
気付いた時には唇に相馬さんの温かい体温を感じる。
直ぐに相馬さんの舌で唇をノックされる。
それを合図に私はおずおずと口を開くと、あっという間に相馬さんの舌が口の中を優しく動き回る。
余りの気持ち良さに息が漏れる。
その声を聞いて相馬さんの舌は動きを速める。
もっと欲しくなり口をさらに開けると、絡められていた舌がすっと抜かれる。
そっと目をあけると、今までに見たこともないほどに色っぽい目をした相馬さんが目に入る。
「もう俺限界なんだけど。」
相馬さんんの太ももに頭を乗せていたが、頭に熱く固いものを感じ、その言葉の意味を理解する。
一度離された唇の温度が恋しくなり、上体を起こし相馬さんの首に手をかける。
今度は私から唇の体温を分けてあげた。
これが合図となったのか、相馬さんは私の体を優しくなでる。
柔らかい膨らみをそっと触られると、気持ち良くて鼻から息が抜ける。
相馬さんの手の温度を感じながら、声が漏れそうになるのを必死に我慢しているうちに、あっという間に服が脱がされている。
さっきまでテレビを見ていたソファーにまだいるので周りは明るい。
はっと我に返ると慌てて脱がされた服で前を隠す。
「もう我慢できないって言ったよね。」
そう言いながら相馬さんは隠している私の手にそっとキスをする。
「綺麗だから隠さないで。」
そう言ってさっきキスした手から服をとる。
そして相馬さんも服を脱いで私をぎゅっと抱き締める。
肌と肌が触れ合っただけで、何もされていないのに私の奥が熱くなる。
抱き締められている体が離されると、相馬さんんは私のふくらみにつんっと立っている部分をそっと口に含む。
優しく舌で転がされると、我慢していた声が漏れてしまう。
「声、我慢しなくていいよ。」
相馬さんの掠れた声が耳に入る。
相馬さんの手がどんどん下の方へ降りていく。
私の奥がどんどん熱くなり、蜜が溢れて来るのを感じる。
その蜜をそっと掬うように相馬さんの指が私の奥を刺激する。
我慢できずに声が漏れる。
私の声にシンクロするように相馬さんの指も激しく私を刺激する。
昔から私の体を知っているかのように、私が気持ちいいところを刺激する。
もう限界だと感じた瞬間、一瞬頭が真っ白になる。
息が上がっている。
相馬さんは指を一旦抜くと、私をぎゅっと抱き締めながら耳元で囁く。
「ごめん、俺もう限界。」
「私も限界。洋平さんを頂戴。」
私の言葉を聞くと嬉しそうに顔を歪める。
「もう一回名前呼んで。」
「洋平さん」
その言葉が合図となり、一気に相馬さんが私の中に入ってくる。
大きくて熱く、あまりの気持ち良さに声が出る。
目を開けると、相馬さんが眉間に皺を寄せて我慢している表情が目に入る。
その表情があまりに色っぽく、体の奥がきゅっと締まる。
「きつくて気持ちい。優しくするから動いてもいい?」
言葉が出てこず、頷くのが精いっぱいだった。
優しくするという言葉とは裏腹に、相馬さんは感情をぶつけるかのように激しく腰を打ち付けてくる。
時折漏れる相馬さんの気持ちよさそうな声と眉間に皺を寄せて我慢する表情が、益々私を気持ちよくさせる。
どんどん動きが早くなってきて、私も限界が近くなってくる。
私の奥もぎゅうぎゅうと相馬さんを締め付ける。
ため息とともに相馬さんの声が降って来る。
「凛、ごめん。俺もうダメだわ。」
相当長い時間相馬さんが私の中にいて、私も既に限界を迎えようとしている。
返事をする前に私の奥がさらにぎゅっと締まる。
同時に私の中の相馬さんもどくどく脈を打っている。
頭が真っ白になり、体の力が抜ける。
相馬さんもぐったりと力が抜けた体を横にする。
「みっともないな。夢中になり過ぎた。」
恥ずかしそうにしながら、私をぎゅっと抱き寄せる。
「私も夢中でした。」
「また敬語。敬語使ったら、これから罰を与えるからな。」
そう言って相馬さんは優しく私の唇を啄む。
「これが罰。」
いたずらそうに笑う相馬さんが愛おしい。
ベットの上でゴロゴロしていたら、2人共体力が残っていなかったのでいつの間にか眠ってしまっていた。
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