第13話

 (※ダミアン視点)

 

「あなた、見直したわ! 一時はどうしようかと思ったけど、これで私たち、捕まらずに済むのね!」


「さすがだわ、お父様!」


「だが、油断はできないぞ。ブレスレットを売る時も、普通の店で売ってはダメだ。盗品だと通報されて、そこから足がついてしまうからな。だが、闇市場ならその心配もない。盗品であっても売れるし、売った者の情報をばらされることもない」


「どんな時でも冷静なのね」


「かっこいいわ、お父様」


 私は思わずにやけてしまった。

 これで、最悪の状況から抜け出せることができる。

 それどころか、一気に金持ちだ。

 にやけるのも仕方がない。

 私たちは、さっそくジャレットを閉じ込めている倉庫へ向かった。


「ねえ、あなた、私、欲しい服があるの」


「私はピアスが欲しいわ」


「ああ、何でも好きなものを買ってやる。これからは、贅沢な暮らしができるぞ」


 そんな会話をしているうちに、倉庫へ着いた。

 私たちは中へ入った。

 そこには当然、ジャレットがいた。

 彼は弱っているが、まだ生きている。

 さっそく私は彼の服の袖を上げた。

 しかし、そこにはブレスレットはなかった。


 反対の手だろうか。

 そう思って確かめたが、そちらにもなかった。


「おい、どうなっているんだ! ブレスレットをどこに隠した!」


「ブレスレット!? いったい、なんの話をしているんだ!?」


「とぼけるつもりか!? くそっ! 手間を取らせやがって! 二人とも、この倉庫の中を手分けして捜してくれ! どこかにブレスレットが隠されているはずだ!」


「ええ、わかったわ」


「私はこっちを探すわ」


 食事ができるように手の拘束を外していたが、それが仇となった。

 金目の物を盗まれないように、ジャレットはブレスレットを隠したのだ。

 倉庫内にあるのはわかっているから、時間をかければ見つかる。

 彼の行為は全くの無駄なのだ。

 しかし、できれば早く見つけたい。

 私は彼に詰め寄った。


「もう一度聞くぞ! ブレスレットはどこだ!?」


「知らないと言っているだろう! いったい何の話をしているんだ!?」


「よし、いいだろう。次にとぼけたら、あんたの顔を一発殴る。ブレスレットはどこだ?」


「だから、本当に知らないんだ! 頼む、殴らないでくれ!」


 私は拳を構えた。

 そして、その拳を振り下ろそうとした、その時……。


「そこまでだ! 全員動くな!」


 大勢の憲兵が倉庫になだれ込んできた。


「な、なんでこの場所が……」


 一気に血の気が引いた。

 どうなっている……。

 私は何か、選択を間違えたのか?


「あなたたちがジャレット様を連れ去った犯人だったのですね」


 聞き覚えのある声に驚いて、私はそちらを向いた。

 そこにいたのは、スーザンだった。

 彼女の隣には、カーティス様がいる。

 いったい、どうなっているんだ?


 私には、今の状況がまったく飲み込めなかった……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る