第12話

 (※ダミアン視点)


 ある情報が書かれたビラが、街中に配られていた。

 その情報とは、ジャレットがパーティの日にブレスレットをつけていたというものだ。

 そのブレスレットの写真もビラに貼られていた。

 ブレスレットが落ちていれば、憲兵に知らせてくれというお願いも書かれていた。

 そのブレスレットが落ちている場所から、ジャレットの居場所が特定できるかもしれないからだ。

 しかも、ブレスレットを見つけた者には、それを差し上げると書かれていた。

 なんと、一億円近くの価値があるそうだ。


 街ではさっそく、ブレスレットを捜している者が何人か現れていた。

 私は、ジャレットの服装を思い出す。

 彼は、ブレスレットをつけていただろうか。

 よく思い出せないが、たぶん、服に隠れて見えなかった。


「ねえ、あなた、どうしましょう。もしブレスレットが倉庫の近くに落ちていたら、彼の幽閉場所が特定されるかもしれないわ」


「そうよ、お父様、もしそうなったら、私たちはお終いよ」


 二人の言葉に、私は焦った。

 確かにそうだ。

 憲兵に加え、ブレスレット目当ての一般人まで捜索し始めたら、見つかるのは時間の問題かもしれない。

 これからブレスレット目当てで捜索に加わる人物はどんどん増えるだろう。

 時間が経つほど、状況は悪化する。

 誰が考えたか知らないが、このビラの効果は絶大だ。


 しかし、私は冷静に考えた。

 こういう時こそ、焦りは禁物だ。

 そして、ある考えが浮かんだ。


「二人は、彼がブレスレットをつけているか見たか?」


「いいえ、見てないわ。そんな余裕なかったから」


「私も見てない」


「じゃあ、ブレスレットが落ちた音は聞いたか?」


 私の言葉を聞いて、二人は不安そうな表情から一気に明るい表情に変わった。


「聞いてないわ! そうか、もし落ちたら、音が鳴るはずよね。私たちはあの時周りを警戒していたから、音が鳴れば気付くはずだわ!」


「そうよ! 私たちが通ったのは、石畳の道よ。ブレスレットが落ちれば、必ず音が鳴るはずよ! ということは──」


「そうだ。ブレスレットは、ジャレット様がつけているままなんだ。最悪の状況だと思っていたが、私たちに運が傾いてきたようだ。彼からブレスレットを奪い、遠くの街へ行こう。ブレスレットの価値は一億円らしいから換金して、新しい生活を始めることができる」


 誰がビラを配ろうと考えたか知らないが、裏目に出たようだな。

 おかげで私たちは捕まる心配もなくなったし、一気に金持ちになれる。

 ビラ配りを考えたやつには感謝しかない。

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