第10話
「え、ジャレット様はまだ見つからないのですか?」
私はカーティス様に尋ねた。
ジャレット様がいなくなってから、24時間以上経過した。
しかし、未だに彼は見つかっていない。
それどころか、目撃情報すらない。
「ああ、誘拐されたとみて捜索しているが、あの日、パーティに参加していた者の家からジャレットは見つからなかったんだ」
「そうですか……」
彼はどこにいるのだろう。
話によれば、パーティがあった日、ジャレット様の部屋が荒らされていたそうだ。
まるで、金目の物を盗もうとしていたみたいに。
おそらく、何者かが盗もうとしていたところにジャレット様が鉢合わせしてしまったのだろう。
そして、顔を見られてしまった犯人は、目撃者であるジャレット様を連れ去った。
身代金の要求はないので、身代金目的の誘拐ではない。
おそらく、目撃者のジャレット様を消す度胸もなく、かといって放っておくわけにもいかないので連れ去るしかなかったのだろう。
しかし、いつまでもジャレット様が生かされている保証はない。
早く彼を見つけなければならない。
愚弟と言いながらも、カーティス様はジャレット様のことを心配している。
私も、そんな彼のために、できることはなんでもするつもりだ。
私は考えた。
ジャレット様を見つける方法を……。
*
(※ダミアン視点)
ああ、危なかった。
何とかバレずに済んだ。
憲兵たちは捜索を終えて帰っていった。
私は大きく息を吐いた。
ジャレット様を家に捕らえておかず、別の場所にしておいてよかった。
叔父の所有している倉庫に、ジャレット様はいる。
叔父は高齢でほとんど家から出ないので、その倉庫を使うことはない。
私はその倉庫のカギを預かっていたので、その倉庫にジャレット様を閉じ込めておいた。
足は鎖につながっているので逃げることはできないし、壁は分厚いので声が外に届くことはない。
死なれては困るので、口と手の拘束は解いておいた。
そして、食べるものと飲むものも与えておいた。
数日は持つはずだ。
何度も倉庫を訪れるわけにはいかない。
目撃されたら、そこから足がつくかもしれない。
心配しすぎかもしれないが、どんなに小さな可能性でも、疑われるわけにはいかない。
慎重すぎるくらいがちょうどいいのだ。
最初はジャレット様を家に閉じ込めておく予定だったのも、倉庫に変えたおかげで助かった。
慎重に行動したおかげで助かったのだ。
運はこちらに傾いている。
このまま見つからずに済むかもしれない。
あとは、経済的問題を解決できれば、言うことはないのだが……。
そう思っていると、その問題が解決できるかもしれない、思わぬ情報が入ってきた。
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