第9話

 (※ダミアン視点)


 街が騒がしい。

 当然だ、ジャレット様が行方不明になったのだから。

 今は憲兵が彼を捜しているが、まだ見つかっていない。

 彼が見つかるのは、私たちの終わりを意味する。

 私たちは彼を攫ったのだ。

 当然バレたら、重い処罰を下されるだろう。

 その事態を避けるために、いい手はないか考えているが、今のところ打開策は見つかっていない。


 そんなことを考えていると、玄関のドアをノックする音が聞こえてきた。


「はい……」


 私は返事をした。


「憲兵の者です。少しいいですか?」


 その言葉に、私は驚いた。

 アマンダとベラを見ると、彼女たちも驚いていた。

 彼女たちの不安が、こちらにも伝わってくる。

 先日、憲兵の者がパーティの時の事情を聴きに来たが、その時はなにもなかった。

 

 私たちは口裏を合わせ、矛盾のない証言をした。

 だから、その時は大丈夫だった。

 しかし、どうしてまたこの家に来たのだろう。

 何か、まずい証言をしただろうか……。

 私は不安な気持ちを顔に出さないようにして、玄関のドアを開けた。


「なんの用でしょうか?」


「こちらの家を捜索させていただきます」


「え……」


 私は驚いた。

 振り返ってアマンダとベラの顔を見ると、彼女たちも驚いている様子だった。


「あの、家を捜索なんて、そんな権限があなたたちにあるのですか?」


 私は努めて冷静に尋ねた。

 しかし、返ってきた答えは……。


「令状はあります。私たちの捜査を妨げるようなら、あなたも連行します」


「わかりました」


 私は彼らに従うしかなかった。

 憲兵の者たちは、家中を捜索し始めた。

 

 私たちは、黙ってその様子を見守ることしかできなかった……。

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