第3話 やっと見えた光


「すごい……コレが光、というものなのですね」


 瞑ったままの目からつぅ、と涙を一筋流すリアラ。

 彼女は生まれて初めて、色のある世界を見ていた。


 それを可能にしたのが、僕が今発動している祝福。


 僕の祝福は『共有コネクト』。

 自分の見たモノを、触れた相手と共有できるといった能力だ。


 彼女は今、僕を右手を通すことで光と色を感じ取っている。


「僕の『コネクト』があれば、キミは他の人と同じように生活ができる。それどころかもっと裕福な暮らしも可能かもしれない。しかし……」


 ベッドの周囲には、リアラが作った物が所狭しと溢れている。

 キラキラと輝く新品の剣や盾、宝石や土偶まで。何でも彼女の思い通りに作れるようだ。

 ……いや、土偶は必要ないと思うけどね。


 そんな素晴らしい能力も、完璧ではなかった。能力を解除したら消えてしまうのだ。

 それでもこの能力は便利すぎる。乱用し過ぎれば必ず目立つし、彼女を狙う人物だって現れるだろう。正直言って、使いどころはかなり難しい。



「私はそれでも……シーラを助けに行きたいです」

「そうか……」


 彼女に残された家族はもはやそのメイドだけだ。

 助けてやりたいと思う気持ちも当然だよな。


「リアラの国と戦争を始めたのは、バーラック王国だ。最近はあちこちの国と戦争を起こして、どんどんと領土を広げているらしい。ウチの国とは同盟らしいけど……交易もあるから、いつか情報がバレて捕まるだろうね」

「そんな……」

「――だから僕は、ミードのダンジョンへ行こうと思う」


 途中まではうんうんと頷いていたリアラだったが、僕が言った最後の言葉の意味が分からずに首をコテン、と傾げた。


「あの、そのミードっていったい……?」

ミード神酒というダンジョンの名前さ。通称『冒険者の楽園』。このダンジョンの最奥には、死者さえも蘇生するエリクサーがあると言われているんだ」


 

 ミードを使い、リアラの視力さえ戻れば。持ち前の想像力と合わせて、彼女はもっと凄い武器を作れるようになるだろう。

 それこそメイドの一人を救うぐらい、どうとでもなるぐらいに。


 それにリアラの為だけじゃない。

 僕にとっても、あのダンジョンを攻略する価値がある。

 あの最難関のダンジョンを攻略したという名声があれば、僕の貧乏生活は終わりを告げるはずなんだ――。



「一人じゃ無理でも、僕と君が組めば何だってできるさ。だから僕と一緒に、ダンジョンを踏破してくれないか?」


 リアラは瞑ったままの瞳で僕の顔を見つめている。

 それは悩んでいるのか、はたまた僕のことを見極めようとしているのか。



 暫し無言の時間が過ぎたが、遂にリアラの口が開いた。


「……私の命、全てメージュさんに預けようと思います」




 

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