白黒4:「いつものは少し汚したの」

「あら?今日は一寸ちょっと違うのね」

「いつものは少し汚したの」


ーー冬も深まる12月。

僕たちは相も変わらず、なんとなく。

ちょろちょろ会っては話していた。

会う時間が昼休みではなくなり、シロの暇な時…つまり放課後辺りになった程度の変化しかない。


「…と言うか、代えあったのね…普通に一張羅だと思ってたわ」

「まあ、僕的には実際ほぼ一張羅だけどね?」


今、僕が来ている黒衣は少し白い線が入りコントラストを作り出している。

袖から肩、裾から背中にかけて左右対称に伸び、彩りを加えている。


「結構イカスとは思うんだけど、やっぱり真っ黒の方がしっくり来るんだよねえ」

「…クロ、なんでそんなに黒い服ばっかり着てるの?」

じっ。シロが訝しげに僕を視てくる。


「下の方は兎も角、そのコート?は手作りでしょ?普段着のあっちも」

「んお?そう言うのわかるの?シロ」

「正直、黒いせいで一寸ちょっと分かりにくいけどね。こっちのコートは白入ってるからなんとか視えたって所」


で、そこから類推して前のも、と思ったの。

と事も無げに言われ、僕は驚いていた。


「えー…?そう言うの、何視てるの?」

「そりゃ、私たちが視るモノなんて一つしかないでしょ?宝石こころよ、宝石こころ

「うーん…?」


ばさばさと黒衣を振るが当然何も視えない。

自分のは視えないから当然なんだけど。


「うーん…?」

「…たまにクロって何も知らないわよね」

「ひどくない!?」

「ひどくない、って言うか寧ろ私の方が不思議よ」

「?」


不思議とは何がだろう?

そう言う感情こころが思いっきり顔に出てたらしい。


「…視るまでもなく、何が?って顔してる」

「いや、だってわかんないし…」

「えぇ…」


ため息と共に頭を抱えられてしまった。なぜだ。


「…そもそも貴女、この眼の事どれくらい分かってる?」

「えー、んー…あんま深く考えた事なかったね」

「えぇ…」


もう一度ため息をつかれてしまった。解せぬ。


「視えるモノは視えるんだし、それで良いかなーって…」

「…呑気……全く」


ばっ、シロがポケットから取り出したのはーー


「…扇子?」

「ええ、しっかりこれを"視"てみて」


ふんふん。取り敢えず言われた通り、扇子に焦点を合わせて"視"る。


「…んーと、あ。なるほど?」

「…やっぱり視えるのね…」

何故だかすごく微妙な顔をされてしまった。


ともあれ、その扇子にはしっかりとみどり色の光が有った。


「この翠色が、これを造った人の色ってこと?」

「簡単には乗らないけどね、しっかりした宝石こころを持ってる人が丹精籠めるとこうなるってことよ」


ほえー。

人の宝石こころは何もしなくても視えるけど。

まさかモノのこころも視えるとは。


ぱちん。扇子が閉じられ仕舞われる。

「まあこの眼には、そう言う使い方もあるから色々やってみたら?」

心なしか少しシロが誇らしげなのは多分見間違いじゃないはずだ。

宝石こころ、めっちゃ光ってるし。


「んーそうだねえ、やり口が分かれば色々出来そう?視えてる光の線辿ってこれ造った人見つけるとか?」

「…えっ?」

「えっ?」


なんか驚かれた。なぜに?


「えー?だってほら、この翠の光がこう、あっち行ってるからつまりこれは造った人に繋がってるのかなって」

「………うわ、ホントに視えるわ…ええ…」


…その日のシロはなんだか微妙な顔をずっとしていた。

なんでだろう。

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