黒3:「……何でいるの?」
朝。ではなく昼。
「…………ん、く、ぁ、あ……ふぁ」
「……ねむ」ぼりぼり。頭を掻く。
僕は今日が講義が無い日だからというのをいいことに真昼間辺りまで寝ていた。
「ぁぁ…くそ、幾ら寝ても眠い……寒い……お腹すいた」
ばきばき背骨を鳴らしながら伸びる。
「くぁ……まあ、でもよく寝れたかなあ」
じゃばー。置きっぱなしのマグカップにこれまた夜沸かしていた湯をぶち込む。
「朝はやっぱこれだねえ……昼か」
ぱこん。ざざー。さっさかさっさか。くるくる。じゃばー。ぐびっ。
いつもの如くインスタントコーヒーを作って飲み干す。
「……さてどうしようかな……」
今日の予定を考える。
バイトは昨日首になったからこれだけぐうたらしてたのもある。
すぐさま次を探す、という気にもなれない。
「……ん?」
ごろごろ。そう思ってたらお腹がつらくなってきた。
端的に言って痛い。つーか出そう。
「……あ”」
そして思い当たる節は、昨日のお昼。
激辛の担々麺をしっかり完食して丸一日程度。
そもそも辛い物をあまり食べない僕のお腹には凶悪に過ぎた。
「……次は絶対他のにしてもらうか……くそう」
そんなことをつぶやきつつ、暫くトイレに籠る羽目になったのだった。
◆
「……とりあえず、ご飯でも食べにいこう」
激闘を終えた僕がそう考えるのは当然だった。
何せ詰まってたものが出たので。
適当に着替えて(と言うより脱ぎ散らかしてたのをもう一度着て)外に出る。
「何食お……辛いのは無しとして……」
折しも時間は大体12時過ぎ。
昨日彼女と出会ったくらいだ。
「というか、結構昼だと視づらいんだな……」
それに、どうにも昼だと夜ほどの輝きが見て取れない。
と言うより普通に明るいからか、皆が光っているので紛れてしまうのだ。
「…………まさかねえ」
じっくり"視"れば会う事も出来るだろうけど、まあ。
流石にこれ以上辛いの食べたら僕のお腹が大爆発する。
「……ラーメンは普通に食べたいな……あそこでいいかな」
てけてけ。
ぼんやり考えながら歩きだす。
がー。「いらっしゃいませー」の言葉を後ろに流しつつドーナツ屋”
ドーナツだけでなく店内で食べるならラーメンとかも普通にあるのだ。
「黄金ドーナツを二つとラーメン」
注文を手早く済ませて行く。トングを持つとカチカチやっちゃうよね。
ちょっと多いかなと思いつつ席に行こうとすると。
「――私は、白銀ドーナツでいいわよ。後
背後からそんな声がかけられた。
「……んぇ?」
「やっほう、クロ」
振り向けば、そこにはシロがいた。
「……何でいるの?」
「ふふ、それは存在意義的な意味で?」
「……んなわけないじゃん、分かってて言ってるでしょ」
「今日も昼休みよ。サクッと抜けてお昼の時間」
「あー……いや、それでもここにいるのがおかしい」
会話しながら先に取っておいた席(丁度二人席を取ってた)に行く。水は二人分必要になった。
「よっと。そんなに可笑しな事ないわよ、ちょっと”視”ればすぐわかるもの」
「えー?いや、僕は全然見えなかったんだけど?真昼間じゃみんな光ってるし」
「……ああ、なるほど。そう言う事ね」にっこり。
どうやらなんかに気づいたようだ。
「……その笑い方なんか、あれだなあ。猫がネズミをべちべちやる時みたいな……そう言った感じのアレを感じる」
「……ちょいちょい失礼よね、クロって」
「悪い悪い、そう言うの慣れてないんだよね」
シロはぐびっと水を一息飲んだ。何やっても絵になる子だなあ。
「簡単な事よ。貴女の心、真っ黒だもの。そりゃ何処で見ても昼なら気づくわ」
「あ、そういう」
なんとも言い難い真相が明かされ、なんか微妙な気分になった。
「……というか、意外と物理的なアレに左右されるんだね?これ」
「基本的には思い込みよ。多分」
「たぶんて……」
なんだか気の抜ける台詞だ。たぶんて。
「黄金ドーナツ二つと白銀ドーナツ、
「あ、出来たみたい。取ってくるよ」
「零さないようにね」
「わかってるって……」
そんなシロの台詞を聞きながら、僕は二人分のご飯を持ってきたのだった。
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