Hide and Shoot

@kuronekoya

ギリースーツの獣たち

 相方にハンドサインで獲物の位置を知らせる。

 互いに目を合わせ、事前の打ち合わせ通りのポジションを取り、銃を構える。


 俺たちの組織に名前はない。

 ただ、その過激な活動や、ギリースーツの色から「緑のたぬき」と揶揄されることはままあるが、構成員の実態や活動状況は公にはされていないので、俺たちの存在自体がせいぜい都市伝説やツチノコよりは信憑性がある程度だ。


 活動範囲は愛知県を中心とした山間部。

 時には里山まで出動することもあるから、稀に目撃されることもあるだろう。


 母体は正規の狩猟免許を持たないキャンパーやサバイバルゲームのプレイヤーだったらしい。

 環境省が秘密裏に個別に声を掛け、スカウトしていったと聞いたことがある。

 俺もまあ、そのクチだ。


 俺とバディは互いの射線に入らぬよう、そして獲物の視界に入らぬよう身を隠す。

 バディのハンドサインから3カウントで俺は引き金を引いた。

 同時にバディのメインアームの銃声も響く。

 もしも近くに誰かがいてもひとつの銃声に聞こえただろう。


 俺たちは倒れた獲物に歩み寄る。

 バディが専用の手袋をはめて獲物を袋に放り込む。


 俺は血溜まりを……赤いきつねだったものの血溜まりを、何の感慨もなく見ていた。


 全てはそう、本州からエキノコックスを駆逐するために、俺たちは今日も明日も引き金に手をかける。



Fin.

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